第87話

 手を地面につけて頭の中で魔法が発動した際の現象を想像していく。

 そして、知識の中にある地殻のイメージを固めていき事象を構成する。

 組み上げるのは魔法。想像するは事象。


 《地殻練成》の魔法を発動させると同時に足元の地面が振動をはじめ、その振動は少しずつ大きくなっていく。

 村全体に振動が広がる前に、魔法で地殻からの振動をカットする。

 魔力が急激に減少していくのを感じる。

 どうやら地殻を構築し直すのは相当な魔力が必要なようだ。

 体から力が抜けかけ地面に膝をついたところで練成が完了する。


 そして……村の隅で……俺の目の前で、地面が爆発すると同時に温水が噴き出した。

 噴き出した温水は周囲に散っていく。

 すかさず、大気の分子運動を停止させる。

 大気の分子運動を停止させた事で音を遮断する。

 噴き出した湯は、堀の中の川に流れこんでいく。

 俺はそれを見ながら溜息をついた。


「さて、次を行うか……」 

 魔力が回復したのを確認してから、風呂釜の土台となる部分。

 地面の整地を魔法でおこなっていく

 地面の整地が出来た所で、次に地面を溶解させて固める事にする。


 頭の中で構成を組み上げていく。

 炭化カルシウムと水と合わせアセチレンを作り上げ、酸素を合わせて火を点火するイメージを頭の中で想像する。

 イメージが固まったところで――。


《高炎》の魔法を発動。


 ――組み上げた科学式が、魔法が事象を変換する。

 そして魔法として巨大な青白い炎球が生まれた。

 

 俺は、4000度に達する20メートルの炎の塊を操作しながら、地面を溶解させていく。

 そして最後に《冷却》の魔法を発動。

 それにより露天風呂の原型が出来た。

 源泉のお湯を露天風呂に引き入れる道筋を作り、熱量を下げるための水を川から取り入れる水道も作り上げていく。


 川と湯船が繋がったままでは熱量が安定しない事もあり、《風刃》の魔法で近くの木を切り

 倒した後に、《風刃》の魔法で適度に切って川と湯船の間に敷居を作り完成させた、

 

 後の問題は配水設備か……。

 どうしたものか。


 俺は一通り終わった事もあり配水設備に関して考えながら自宅に戻るために歩いていると。


 教会の前でウカル司祭様がウロウロしていた。

 どうやら誰かを探しているようだが。


「ウカル司祭様!どうかしたんですか?」

 いつも迷惑をかけているから少しくらいは力になってもいいかも知れない。

 

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