第84話

 どこまでも広がる青空!

 風は冬の到来を予感させるかのように少しだけ肌寒く、とても澄んでいる。

 そして、秋から冬に変わる境目の季節でもあった。


 現在アライ村では、冬に向けて祭りをしていた。

 たくさんの捕獲されてきたクマやイノシシなどの肉が弱火でこんがりと焼かれ、官能的なまでの匂いを辺りに漂わせている。

 多くの村民がこれから到来する厳しい冬に向けて不安を払拭するかのように食して踊り歌う。

 

 そう、誰もが一時の幸せを謳歌していた。

 

「ユウマ!手が止まっているぞ!」

 親父が俺に向けて叫んで来る。


「……はい」

 ただし、俺だけは汗だらけになりながら、たった一人その幸せの時間を謳歌できずにいた。

 プレハブ小屋状態であったアース教会の建物を建てなおす為に、《建物構築》の魔法を発動させて大まかに作ったところで、漢字魔法で左官用のこてと、モルタル入りのバケツを作る。

そしてせっせと、建物の細かい部分に手入れしていた。


 魔法の発動方法を親父に教えた際に、数々の俺の過去の問題点が暴かれた事で、両親は俺をウカル司祭様に売り渡しのだ。

そして、ウカル様から提示された罰は、教会を建て直してくださいという内容であった。

 

当然、俺は『そのままで今は問題ないでしょう?信仰が建物の良し悪し程度で揺らぐのですか?』と説得したが村の大半がアース教徒になっていた事もあり俺の意見は当然の事ながら却下された。

 まことに遺憾である。

 誰かの陰謀すら感じる。

 話によるとポンプ付きの井戸をウカル様が作ったという話で、神秘的だという話になり信仰度が上がったらしい。

 まったく……だれだよ、あんな余計な物を作ったのは……。


 何はともあれ教会を建て直すという話は覆らなかったわけで、村の皆も『ユウマが一人で建て直すなら別にいいんじゃね?』と他人事のように言ってきたのがとても腹立たしい。


 俺は、丁寧にプレハブ小屋っぽいアース教会の建物を解体していく。

 実は一度、魔法で建物をブチ壊して更地にしようとしたら、そんなバチあたりな!と怒られた。


「それよりも……」

 俺は指をビシッと男に向けて指す。


「……ブルーム騎士団長さん、どうしてまだ帰らないんですか?」

 彼の役目はもう終わったと言っていい。

 村の現状を報告するだけの材料は、この一週間で集めきっているのだ。

 それなのに帰ろうとせずに村に滞在している、

 俺が《探索》の魔法を発動させて探し出して必死に狩ってきたイノシシや熊の肉をおいしそうに食べている。

 俺とかまだ一切れも食べていないのに!

 ブルームさんと話をしながら黙々と作業を続けること、古い教会からの護符や飾りなどを拾うことができた。

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