第85話

 それにしてもブルームさんと話していて色々とわかった事がある。

 イルスーカ侯爵領以外は、領地では特に目立った特産物もなく土地は痩せていて農作物の収穫量も少ないらしい。

 ちなみにアライ村を北上すると正者の森と呼ばれる魔物の領域があるらしい。

 そのために魔物領域に面している村々から被害が絶えないとの事。


 出てくる魔物は、話を聞く限りではゾンビなどのアンデットを含む魔物らしいが、アライ村も正者の森に面しているのにそんな魔物は見た事がない。

 せいぜい強いのと言ってもワイバーン程度だな。

 俺は、作業が一段落して肉を食べながら休んでいると……。


「おにいちゃん!」

 ……妹が抱きついてきた。

 2週間以上、家に帰れない事もあり妹も寂しかったのだろう。

 頭の上に手を載せ撫でる。


「おにいちゃん、今日は一緒に寝れるってことだよね?」


「アリア、俺は前から思っていた事があるんだ。そろそろアリアも11歳だ。一緒に寝るのはそろそろ止めないか?」

 もうすぐ妹も俺に甘えるのは止した方がいいだろう。

 妹の将来を思って提案してみたが……。


 妹が顔を真っ青にして体を震わせながら俺から離れて数歩引き下がった。


「どうして?どうしてなの?私にはお兄ちゃんが必要なの!どうして突然、そんな事を言い出すの?どうしてどうしてどうしてどうして……ドウシテ?」

 そこで妹が言葉を何かを思いついたように俺に視線を向けてきた。

 その瞳からは光が消えていて淀んでいた。

 これは妹が苦悩している時に見せるものだ。

 歩き出そうとした妹の腕を掴む。


「アリア。聞いてくれ」

 俺の言葉に妹がうつむいたまま反応してくれないが聞いていると信じて話しを続ける。

 

「いつまでも兄妹で同じ布団で寝ているのはおかしいだろ?そういうのは結婚をした男女がするべきなんだ」

 俺の言葉に妹が頷く。

 よかった、理解してくれたか。

 なら後もう一押しする必要があるな。

 あと数年でアリアも大人の仲間入りだ、そうすれば結婚の話もあがってくるだろう。

 兄としては寂しいが妹のためと思えば大丈夫だ。


「だからアリアが成人するまで待ってほしい。この意味が分かるな?」


「……分かった。私、結婚するまで我慢するね!」


「ああ!アリアはえらいな!!」

 妹の頭を撫でると気持ちよさそうに俺に身を預けてきた。

 相変わらず妹は素直で助かる。

 頭を俺に擦り付けてくるのを見ていると本当に甘えん坊な妹だなと心配になった。

 そんな俺と妹を見ていたブルームさんが――。


「将来、血が舞う未来しか見えないな」

 ――と。焼かれた肉を食べながら何か呟いているが、妹のアリアがそんな事するわけないだろ?

 まったく心配性だな。


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