第82話

「実は俺も小さい頃は、少しだけ人に迷惑をかけていたので、よくウカル様に怒られていました」

 俺の言葉に親父と母親が『え?少しだけ?』と言っているがそれは今はそれは置いておこう。。

 そう問題はここからなのだ。


「それで、俺は思いました。こんな不当な事で怒られるのは幼児虐待ではないかと!」

 精神は肉体年齢に引き摺られる。

 ただ俺には、いろいろな知識があってそれを元にきちんと自分の行動を抑制出来ていたと思う。

 つまり俺は悪くない。

 怒るウカル神父が悪いのだ。


「ユウマ、魔法にまったく関係話のようだが。それはどこまで続くんだ?」

 まったくの親父はすぐに答を聞きたがるな。

 たしかに魔法習得にはあまり関係ないけどな……。

 そんな俺に親父は――。


「そもそもユウマ。お前は、小さい頃から山や川へ行っては、イノシシや熊、さらにはレッドボアまで村内に連れてきておいて何を言っているんだ?」

 ――的確に突っ込みを入れてくる。


「まってください!それはそれ、これはこれです。俺は昔の事は振り返らない主義なのです」


「アナタ……この子大丈夫なのかしら?人間として……」

 たかが過去を振り返らない程度で、そこまで突っ込まないでほしい

 

「やっぱり育て方が悪かったのか……」

 俺とか、ほとんど放任主義だったのに何を今更、きちんと育てたような言い方をしてくるのか……突っ込みを入れたい。

 とりあえず親父も母親に同意しないでほしい。

 というか話が進まないから!

 静かに俺の話をきけと思う。

 突っ込むと入れられると話が進まないからな。

 

「――結論から言いましょう。俺はウカル様が所蔵しているという魔法の本を奪って魔法を覚えようとしたのです。そして俺を虐待した事を反省させてやろうと……あれ?」

 気がつけば体を縄でグルグル巻きにされていた。


「続きを話せ、話し終わったらウカル様にお前を引き渡す」


「……それで、教会の近くの地面に穴を掘って侵入し床板を外して所蔵していた魔法の本を確保したんです」


「それで魔法が使えるようになったという事か?」

 親父の言葉に俺は頭を振る。


「いえ使えませんでした。ウカル様が使う魔法の構成要素は主に四体言に分別されます。

まずは大気に存在している何かしらに意志を伝えるための銀の粉末を撒く動作。

次に指先に体内の何かを集中させた後に大気に魔法陣を描く動作。

そして正しい術式詠唱をすること。

そこで魔法の発動ワードを唱える事で、初めて魔法が使えるようになるのです」


「……あなた。ユウマが言っていた事、わかった?」


「さっぱり分からん」

 きちんと説明したはずなのに理解してもらえないと俺のモチベーションが……。


「とにかく、ユウマが使っている魔法はそれとは別という事だな?」

 親父が核心をついてきた。

 そして俺に続きを話せと催促してくる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る