第80話
「それで聞きたい事はなんでしょうか?」
両手を摺り合わせて敬語を使いながら上目遣いで俺を見てくるひげを生やした中年。
その姿を見て俺は内心、冷や汗を流していた。
女性が上目遣いをしてくる威力はすごい。
だが、中年がしてくる上目遣いもまた違う意味ですごかった。
「まず、俺の口からはエメラダ様には何も言いません。ですから安心してください」
ただし、俺以外の口について責任はもてない。
人間はおしゃべりが好きな生き物だからな。
「分かった」
俺の説得に納得してくれたのようやくブルームは、普通の態度を取ってくれた。
「ユウマ君。それで何を聞ききたいのだ?」
まずは、とりあえず聞けるだけ聞くとしよう。
俺は自分が作った壁や堀を指差す。
「――実は、……あの壁と堀ですが俺が作ったんですが……「は?作った?」……はい。何か問題とかありますか?」
俺の言葉にブルームは、うろたえ始めた、。
「ちょっと待ってくれ!このアライ村を覆っている壁と堀をユウマ君が村長として指揮をとって村人と一緒に作ったものなのか?」
エメラダ様と同じ反応をしているブルームを見ながら
「違います。俺一人で魔法を使って作りました」
と説明する。
すると――。
「少し魔法を見せてもらってもいいかな?」
――と言いながら俺を見てくる。
「別にいいですけど?」
俺は、【風刃】の魔法を発動。
森の木を3本まとめて切り倒した。
さらに【風刃】は、近くを通りかかった2メートルほどのイノシシも両断した。
そして俺は、毛皮が高く売れないなと落ち込んだ。
「どうですか?」
振り返ると、そこには困惑した表情のブルームが居た。
「ユウマ君。結論から言おう。壁と堀は問題ない――ただ……」
そこで困惑した表情から真剣味を帯びた表情で俺の瞳を見てくる。
「問題は君だよ……これだけの魔法を触媒もなし、魔法陣もなし、詠唱もなしで使える魔法師なんて見た事がない。こんな非常識な物を見せられたら、村の壁や堀なんてどうでもいい話しだ。」
ブルームの言葉に、やはりと頷く。
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