第76話

「それでね……。どうして村長がいない?という話になってね……騎士団長の人が、私達を疑ってきたの。それで……」

 つまり、エメラダ様が率いる騎士団と、村に派遣された騎士団はすれ違ったと言う事か?

 それはまた面倒な……。

 やはり中世時代だと情報のやり取りに齟齬が起きるな。


「それでどうなった?」

 周りを見ても騎士団の連中がいない。

 100人近い村人が集まっているのに騎士団の連中がいないのはおかしい。

 俺の言葉に――。


「ユウマ君のお父さんと、私のお父さんが、騎士団の人に説明したの……」

 ――リリナは話してきた。

 周りを見るが、親父もヤンクルさんの姿は見当たらない。


「つまり、親父とヤンクルさんは、俺が村長代理をしていると説明したけど納得を得られずに捕まったと言う事か?」

 リリナが頷くのを見て、俺は閉口した。


「ユウマ君の言うとおり、『我々、騎士団を謀っているのか』と言い出してね……お父さん達が捕まったの」

だから村の人だかりができていたのか……。


「でも、よかったよ。ユウマ君がいれば相手もすぐに納得してくれる……「それはきびしいな」……え、どうして?」

 リリナは、言葉の途中で俺に否定された事で訳が分からないといった表情を見せてくる。


 俺も自分の身の潔白を証明したい所だが、それを証明する村長代譲渡書をエメラダ様が不審者の取り調べに使うと言う事で渡してしまっている。

 つまり潔白を証明するための書簡が今、手元にない。

 

 こんな事態になると思っていたら、エメラダ様に何か用意してもらっていたんだがな……。

 事実は小説より奇なりと言うが……どうしたものか……。

 打開策が思い浮かばないな。

 

「それじゃどうすればいいのかな?」

 リリナが不安そうな表情で聞いてくる。

 とりあえず安心させておくか……。


「大丈夫だ。俺に任せておけ」

 俺はリリナの頭の上に手を載せながら自信を持って言った。

 そうだ、何かあったら俺には奥の手がある。


「それでその騎士団長と言うのはどこにいるんだ?」


「村長の家にいるけど……どうするの?魔法で吹き飛ばすの?」

 吹き飛ばさないからな。

  

「そんなことしたら大変なことになるぞ?イルスーカ侯爵軍どころかアルネ王国まで敵に回すことになるぞ?」

 俺の言葉にリリナが、神妙そうな顔をして頷く。

 ようやく理解して――。


「つまり全員を殺ったあとに、埋めてそんなのは来なかった。いいね?って状況にすればいいのね?」

 ――くれてないな。

 っていうか……。


「やらねーよ!お前の中での俺は一体どんな風に見えているんだよ!」

 思わず突っ込みを入れてしまった。

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