第二章

第75話

 エメラダ様がイルスーカ侯爵様へ、事の顛末の報告に出てから3日が経過した。

 結局、ウラヌス十字軍が攻めてきた理由については、村の皆に説明はしなかった。

 魔物が攻めて来たということ事で、そのまま押し通した。

 ヤンクルさんをはじめとする数人の大人達には、『いらぬ騒ぎは起きない方がいいと』と口止めをした。


 あとは俺が作った壁と堀は残される事となった。

 外部からの敵の侵入を防ぐ役割を持つこの壁は、この村の周囲の魔物に対しても有効だからだ。

 ほぼ村人の満場一致で残す事が決まった。

 そして、村の出入りする際の場所も一箇所だけの方が守りやすいからと言う理由で、エメラダ様がお帰りになる際に通られた南門だけとなった。

 きっと、不便を感じるのは、山に狩りにいく仕事をしている俺くらいなものだろう。


 村まわりの壁と堀を残す事と、出入り口を南門のみに絞って残す事を決めた時には、時刻はすでにお昼を過ぎようとしていた。

 俺は家で食事を取った後、一人で村の内と外の堀を眺めながら傾斜をつけていた。

 俺の中の知識では、水は流れていないと淀んで腐ってしまう。

 その為に、川と繋げる事で堀の水を循環させることにした。

 少しずつ川底に傾斜をつけていく。

 そして傾斜をつけたあとには、川底の分子配列の組み替えを行いコンクリートで覆っていく。

 それが終わった後には、村の近くの川から水を引き込む通り道を作っていく。

 そして循環後には、水が出ていく通り道を魔法で作る。

 

 全てが終わった頃には、すでに日が暮れようとしていた。


「やっと終わった……」

 俺は一人で呟きながらアライ村の南門に通り、自宅に向かっていると村の中央に人だかりが出来ていた。

 俺は、何かあったのか?と思い近づくと俺に気が付いたリリナが小走りで近寄ってくる。。

 そして――。


「ユウマ君、大変だよ!」

 ――語ってきた、リリナの……その表情は切羽詰まっていた。


「どうした?何かあったのか?」

 俺の言葉にリネラスは、頷く。


「実はね2週間以上、外部と連絡が繋がってなかったじゃない?」

 俺は頷きながら思う。

そういえば、定期的に各村の村長は定期的にイルスーカ侯爵様へ情報を送っているとエメラダ様から聞いたな。

 もしかして……それで?


「それでね、その事を不審に思ったイルスーカ侯爵様が、村で何か起きたんだろうと軍隊を派遣してきたの」

 軍隊を?今更か?


「そうか……」

 でも、問題はすでに解決したはずなんだが……。


「それで村長に用事があるらしくて……。ユウマ君を出せって派遣された騎士団長さんが言っていて……ユウマ君とかいなかったじゃない?」

 そういえば昼から外で、ずっと作業していたな……。

 まあ、その作業も全部、終わったが……。

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