第66話

「そうか、貴様は魔法師育成学校には通ってはいなかったのだな。まず天候を操る魔法は人間どころか人外の者にも扱う事は出来ん。天候を操るような巨大な魔法陣を描く事が不可能だからだ。それを使える人材がいるとしたらどう思う?間違いなくユウマは、国に使いつぶされてしまうし戦争の引き金にもなりかねん。何せ天候を操るという事は相手の陣地をそのまま攻撃できる事にも繋がるからな」

 なるほど……軽い気持ちで使ってしまったがそんなに危険な魔法だったのか。

 そうなると、リリナに雪が降るからと村人に知らせに行かせたのも早計だったのかも知れない。

 

「分かりました。以後、気をつけます」

 余計な争い事などない方が良いに決まっている。


「うむ。今度から気をつけるようにな、貴様が国に目をつけられて連れて行かれたら私としても困るからな……」

 エメラダ様の言葉に俺は頷きながら、もう少し考えてから行動に移そうと思った。

 俺とエメラダ様が話をしている間にも雪は降り続け、壁の向こう側から怒鳴り声と大きな音が響いてきた。

 "飛翔"魔法を使い塀の上に立つと、ウラヌス十字軍がテントを畳んで撤収の準備を進めてるのが見えた。

 次々とテントを畳んでは荷物を纏めて背中に背負っている。

 そのような光景が3時間程続くとウラヌス十字軍は撤退の準備を終えて森の中へ姿を消していった。

 あとに残されたのは大量の動物の骨とゴミばかり。

 俺とエメラダ様は、ウラヌス十字軍撤収跡でそれを見ながらお互いにため息をついた。


 魔法で雪を降らせてからすでに2週間が経過しており俺の魔力も限界に達する所で少しづつ降雪量を減らしていった。

 そして雪が降ってから2週間目のその翌日、空は晴天に恵まれた。

 ただ、俺の気持ちは晴れる事は無かった。

 もし、俺が森の中でウラヌス十字軍を出会った時に圧倒的な魔法で彼らを敗走させていたのなら、被害者は出なかったのでは無いのかと悔やまずにはいられなかった。


 エメラダ様は、雪が止んでから数日経過後、今回の顛末をイルスーカ侯爵家の当主である父親に説明すると言って村を出ていった。

 俺は、その際に村の南方側にだけ魔法を使い外と繋がる橋を作り壁には門を作り設置した。


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