第一章 幕間 コンクリーヌ事件

第67話

 4歳の頃の俺は、精神年齢が肉体年齢に引きずられてしまい小さな虫を触ったり野山を駈けずり回って動物や魔物に襲われて逃げたりと色々していた。

 もちろん、子供の足で逃げられる距離なんて高が知れている。

 その都度、死に物狂いで村まで逃げては村の人総出で動物や魔物を討伐してくれた。

 

 そんな少しやんちゃな幼少期だった俺はよく村の人達から怒られたものだ。


 そんな俺でも我慢できない物があった。

 それは家の中の不衛生な所で、台所の床は地面のままなのだ。

 だから食材とか落ちたりすると大変なことになる。

 でも親父も母親もあまり気にした様子はなく、母親は地面に落ちた食材を拾って少しだけ洗ってはそのまま料理をしていた。

 おかげで貴重なたんぱく質であるお肉を齧ると、口の中でじゃりじゃり音がして味も食感も大変よろしくない。

 

 そんな事が毎日続いた。

 日本の清潔な台所があればと何度も思っては、すぐに忘れて『ファイアーボール』と言いながら川で小石を投げて俺は遊んでいた。


 そんなある日のこと、川に向かって道を歩いていると道の先に先に一人の少女が両親に連れられて村に向かってくるのを見かけた。

 村の外から来る人を見るのは初めてだった事もありその場で立っていると、少女の姿をはっきりと見る事ができた。

 背の高さは俺より少し低いくらいだと思う。

 ただ、顔はお人形さんのように整っていて背中まで伸ばしてる金色の髪の毛は太陽の光に照らされていてとても綺麗だった。


 両親に連れられて来た少女は、俺と目が会うとすぐに父親だろうと思われる男性の後ろに隠れてしまった。

 男性は俺を見ると顎に手を当てた後にしゃがんで俺の目線に自分の目線を合わせて語りかけてきた。


「君は、この先の村の住民なのかな?」

 男性の問いかけに俺は頷いた。

 今まで、村の中から出た事の無い俺にとっては外から来る人間は新鮮だった。


「そうです。えっと?」

 なんて答えていいか分からない俺は言葉に詰まった。

 初めての外部の人になんて話していいのか迷ってしまう。


「すまないね。私は、ヤンクルという。元冒険者だったんだが……いや、君に話しても分からないかな?」

 俺は否定の意味で頭を振るが、ヤンクルという男性は『ハハハッハ、無理をしなくていいんだよ』と笑いかけてきた。それがまた美形なだけにとてもよく似合っている。


「今日からこの村で住まわせてもらう事になるから、これからは娘とも仲良くしてくれるかい?」

 ヤンクルさんの言葉に頷く。

 滅多な事で俺は、人を嫌いにはならない。

 それは、俺の中にある知識から得た結論でもある。

 誰にもでも平等に接すれば、摩擦は起きないし、最悪離れれば問題ない。

 だから、大丈夫だ。

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