第49話

「―――う、うん……ユウマがそう言うなら……わかった……」

 そう、いつかリリナが結婚することになったとしても俺はリリナの家族として祝福してやろうじゃないか!そのくらいの度量は持っていたいと思う。


「ユウマ君、マジ刺されても知らないよ?」

 いつの間にかヤンクルさんが傍にいた。

「ヤンクルさん、いつからそこに?」


「最初からいたよ!?『おにいちゃん』って妹さんが君に話しかけた時に、私も話しかけたじゃないか?」

 ……やばい。全然気がつかなかったわ。


「そ、ソーデスヨネ」 


「まったく、ユウマ君。あまりそういう無自覚な事をしていると大変な事になって背中から包丁生えてくる事になるよ?」

 わかりましたからあまり不吉な事を言うのは止めて欲しいです。

 俺は、妹のアリアや幼馴染のリリナに幸せになってもらいたいだけですから。




 防衛戦を開始してからすでに2週間が経過していた。


「ヤンクルさん、イルスーカ公爵様領は、そんなに遠いところに住んでいるんですか?」

 冒険者をしていたと言うヤンクルさんなら多少なら世界の事情に詳しいかも知れない。

 俺は今まで、聞いていなかったことを聞くことにした。

 すでに俺は塀の上でグターっと寝そべっており魔力っぽい何かがほとんどないのだ。

 はやく来てくれないとマジ詰んじゃう。


「そうだね。この村から3日くらいの距離かな?」

 ふむ、3日の距離か。

 つまり……村長一家が逃げた後に2週間も経って音沙汰ないという事は、もしかしたら領主に報告に行ってない可能性もあるんじゃ?


「ヤンクルさん、俺……めっちゃやばい事考えたんですけど……もしかしたら領主とかこの話知らないんじゃないですか?」

 俺の言葉にヤンクルさんは頭を振る。


「それはない。一応、どこの領主も一週間に一回は定期連絡をするように全ての村に言ってるから連絡がこないな?おかしいな?くらいは思ってるはずだよ」


「へー」

 俺は頷きながらも考える。

 ということは不審に思ってから調査して軍を出すまでは一ヶ月近くかかるんじゃないだろうか?

 あと2週間も、この状態を維持するとかマジで無理なんだけど。


「ヤンクルさん、一つ気になった事があるんですけど……」


「なんだい?」


「この村が所属しているアルネ王国と、ウラヌス十字軍が存在している国って仲悪いんですか?」

 俺の質問にヤンクルさんはふむと顎に手を当ててから考える仕草をした。

 ヤンクルさんも中々の美形な為、そんな仕草がとても似合う。

 

 俺の知識の中では、両親の遺伝を受けつけば金髪碧眼の西洋人風になるはずなんだが、何故か成長するごとに東洋人ぽくなっていく俺とは大きな差だ。

 しかも村の中で俺だけ黒目黒髪だし。

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