第48話
特に勇者とかどう見てもアホぽかった。
だけど連日の攻防をしているとジリ貧だと言う事に気が付いた。
これを見越してウラヌス教会が軍を撤退せずに、村に圧力をかけてきたなら彼らの背後にはかなりの策士がいるのだろう。
まさしく諸葛孔明のレベルだ。
「おにいちゃん、おにいちゃん!」
「ユウマ君……」
考え込んでいた所に妹アリアの声が聞こえてくる。
聞こえてきた方へ視線を向けるとアリアが手を振って近づいてくる。
「今日はお家に帰ってこられるの?」
妹が胸の前で両手を握り締めて、塀の上で座っている俺に対して熱弁してくる。
「今日は無理かな?」
「――えええー。壁作ってから一日も帰ってこないよね?倦怠期なの、ねえ倦怠期なの?」
妹が何かを言ってくるが、倦怠期って言葉を10歳の女の子がどこで覚えてくるのだろうか?
今度、教えている奴を見たら少しお話をしないといけないのかも知れない。
「アリア、分かってくれ。これはお前を守るために必要な事なんだ」
「……う、うん。わかった……」
妹はそれだけ言うと顔を真っ赤にして家の方向へトボトボと歩いていく。
その背中を見ながら俺は……一日24回も聞きに来るのはやめてほしいなと思った。
そして……
「ユーウーマーくーん」
妹と入れ替わりに来たのは幼馴染のリリナだった。今日は腰まである金色の髪の毛をポニーテールに纏めてあり、動きやすそうなシックな服装だ。
「えへへ……きちゃた!」
照れながら俺に話しかけてくるが、俺としては何と反応していいのか分からない。
そろそろ日が暮れるから万が一の事を考えて家に戻ってほしいのだが……。
「どうかしたのか?」
とりあえず話しを聞くことにする。
「何か無いと来たら駄目なの!?血が繋がった妹はよくて私は駄目なの!?」
何をそんなに怒っているのだろうか?
別に妹は関係ないと思うのだが……。
どうも女心と言うのは理解できない。
仕方なく塀の上から跳躍し掘を通り越してリリナの前に着地する。
そしてリリナの両手を持ちながら声を掛ける。
「よく聞いてくれ。妹は関係ない、俺たちは一緒に育ってきた家族みたいなモノだろう?」
そう俺はヤンクルさんに弟子入りしてから時折、ヤンクルさんの家に泊まっていたのだ。
冒険者としての必用学である薬草の見分け方や動物の解体の仕方など夜通し教えてもらったこともある。
これはもう家族、つまり身内としてカウントされているんじゃないだろうか?
俺の言葉を聞いたリリナは顔を赤く染めていく。
「だから、もうリリナは俺の家族の一員みたいなものなんだ。だから、妹のアリアと自分を見比べて卑下しないでほしい。俺にとってはリリナも大事な人なんだから」
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