第46話

「―――本当?本当においしい?」

 リリナが疑って聞いてくる。

 味見をしていないのだろうか?

 数日後に16歳の成人を控えているリリナは、出るところが出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるという大人の女性の体をしていて顔も綺麗だし性格だって俺以外にはやさしく品行方正だ。

 アライ村の男性たちに人気がある。


「ああ!おいしいよ、俺が太鼓判を押してやる!間違いなくリリナはいい奥さんになれるよ!」

 すぐにネガティブに考えてしまうリリナを励まそうと少し大げさに褒める。


「本当?本当にいい奥さんになれる?すぐに結婚できる?」

 そうか、どうやらリリナは好きな男性がいるようだ。

 たしかに年頃だからな……そう考えると少しだけ寂しさを感じてしまう。

これじゃいけないな……。

 俺は内心、呟く。

 俺の言葉にリリナは首を傾げるが、リリナにはリリナの幸せがあるんだと俺は自分を叱咤する。


「ああ、リリナならすぐに結婚できる。俺が責任を持つよ!」

 俺の言葉にリリナが顔を真っ赤に染め上げる。

 そんなに俺の言葉が、リリナの心に響いたのだろうか?


「……う、うん。えっとね…ユウマ君……わたしね、ずっと前から……「おーい、ユウマ君。そろそろ交代の時間だぞー」……」

 リリナの話の途中でヤンクルさんの声が聞こえてくる。

 話をしている途中で、ヤンクルさんに邪魔されたのがアレだったのかリリナは荷物を纏めると自分の父親であるヤンクルさんの元へ行きボディを殴って走り去っていった。

 ヤンクルさんはヨロヨロを俺の元まで歩いてくる。


「……ユウマ君、わ、私は何か娘を怒らせるような事をしたのだろうか?」

 生まれたての子鹿のように足を震わせて立っているヤンクルさんが理由を聞いてくるが、俺に聞かれても分からない。


「どうなんでしょうか?結婚できるかどうかの話をしてた気がしますが……」


「な、なるほど大体は理解し…た……よ………」

 そのまま膝から崩れ落ちて倒れたヤンクルさんは意識を失った。

 それを見て、あんな暴力ばかり振るうリリナが好きな男性はどんな人なのか?と少しだけ俺は興味を抱いた。


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