第44話

「うん、わかった。だんなさま不在の家を守るのは妻の役目だからね」


「――ああ、でもアリアは妹だからな。その点は勘違いするなよ?」

 俺の言葉に先ほどまでの目に光が無くなってたアリアはおらず素直に頷いてきた。


「わかっているよ!でもおにいちゃんもようやく自覚が出てきたみたいで私はうれしいな!てへへっ」

 妹が俺の匂いを嗅ぎながら満足そうに一人呟いている。

 やはり一日、体を拭いてないと臭いのだろう。

 それにしても、やっぱり10歳だなと思う。

 簡単に言葉の内容を変えただけで納得するとかチョロすぎて将来が心配になってしまう。

 将来、妹の旦那になる男とは俺も一度は話さないといけないだろう。

 それにしてもと思う。


「おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん」

 何度も俺のこと呼び甘えてくる妹の頭を撫でる。


「アリア、あれだぞ?将来、結婚するんだから甘えてばかりだと旦那に苦労をかけるぞ?きちんとメリハリを持った行動と慎みを持たないとだめだからな?」

 本当に甘えん坊に育ってしまって、将来が心配だ。


「ほら、そろそろ日も暮れるから家に戻りなさい」


「―――は~い、それじゃおにいちゃん。お仕事がんばってねー」

 妹が元気よく家の方向へ向かって走っていくのを見て、俺はため息をつきながらヤンクルさんの方へ視線を向けた。


「やあ、ユウマ君。なんか、君って……それって無自覚でやっているのかな?」

 ヤンクルさんが何か言ってくるが、ただ甘えてくる妹をあやしているだけで他意はない。


「無自覚と言われても、甘えてくる妹をあやしているだけです」

 俺の言葉にヤンクルさんは、溜息をついてきた。。

 たしかに少し、うちの妹は少しだけ甘えたがりかも知れないな。



 ヤンクルさんは俺と交代した後に、しばらくしたら戻ると言って自宅へ戻っていった。

 見張りを交代した俺は塀の上で横になったまま前方のウラヌス騎士団へ視線を向けている。

 すでに日が落ちているという事もあり、俺は現在暗視の魔法を発動させている。

 見ている限りでは、特に彼らは特別な動きは見せていない。


「体から力が抜けたままだな、魔力的な何かが回復してないのか?」

 俺は一人呟きながら、堀の中を時速40kmほどで流れる水を眺めながら原因を考える。

 このまま持久戦に持ち込まれて魔力っぽいものが回復しないままだと、いつか俺は魔法が使えなくなる。

 今までは、こんなことが無かったから解決策が思い浮かばない。

 これは大変、由々しき事態だ。

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