第43話

「――うん!だって……夫婦が同じ布団に毎日寝るのは当たり前ってお母さん言っていたもん!」


「……お、おう」

 そんな話、聞いたことないし、そもそも兄妹であって夫婦じゃないんだが……。

 母親も適当な事を言って妹をからかうのはやめてほしい。

 妹が本気にしたらどうするんだ。 

 とにかく、しばらく帰れない事を説明しないといけないな。

 考えているといつの間にか妹が俺に抱きついてきて。


「おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん、おにいちゃん」

 とおにいちゃんコールを連打してきた。

 甘えたがりなのは仕方ないが、そういうのは家だけにしてほしいものだ。

 ヤンクルさんとか俺と妹を見て微妙そうな顔をしているじゃないか?

 アリアは身長が、俺の顎あたりまでしかないがスラッ伸びた手足に白い肌、母親譲りの金色の髪をツインテールにまとめてあり瞳の色は、空の色のように青いというかなり美少女なのだ。

 きっと将来は、いい婿を取ることになると思う。

 そんなアリアが、俺に甘えるかのように抱きつきながら胸元に頭をグリグリしてるのを見ると甘えん坊だなと思ってしまう。


「アリア、よく聞いてくれ」

 俺はアリアがグリグリしてきている頭の上に手を置きながら話しかける。


「今、この村は大変な状態にあるんだ。隣国のウラヌス教国という所から侵攻を受けているから、その対応でしばらく家には帰れないんだ。だから寝るときも一人で……「どうして!」……」

 突如、妹の様子が変わった。

 どこか説明がおかしかったのだろうか?


「おにいちゃん!家族は一緒に寝ないとだめなの!村の危機よりアリアの危機の方が重要でしょう!」


「――お、おう」

 妹の剣幕に思わず頷いてしまった。

 俺の返答を聞いて妹がパアッと花が咲くような笑顔で俺を見上げてきた。


「それじゃ、アリアとおにいちゃんの家に帰りましょう!」

 そこは親父と母親もいる家なんだが……という突っ込みはしない。

 俺の手を引いて家に帰ろうとした妹の手を離す。


「おにいちゃん、どうして?」

 先ほどまでの笑顔から一変して妹は目に涙をためていく。

 俺は仕方なく、妹を抱きしめた。


「よく聞いてくれ。俺はこの村……じゃなくて妹じゃなくてアリアを守るために戦わないといけないんだ。狩りや仕事で家の夫が出たあとの家の留守を守るのは妻の役目だろう?」


「……」

 アリアは無言で俺を見上げながら続きを話せと催促するような視線を向けてくる。

 そんな視線を受けながら俺は続きを話すことにする。


「つまりだ。アリアを守るために家に帰れない、だからアリアには家を守っておいてほしいんだ」

 抱きしめていた妹がゆっくりと俺の背中に手を回すと強く抱きついてきた。


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