第39話
時速40キロメートルを超える速度で流れている川から水を汲むのは危険だよな……。
そうすると別の場所から水を汲める場所を作った方がいいか。
さて……そうすると、俺の持っている知識から、この世界で利用できる内容をピックアップしていくしかないな。
俺の知識の中にある、浄水システムや上下水道、各家庭への配水などは魔法で行おうとすれば可能だが、それはさすがに、技術革新の影響がどこまでこの世界に影響を及ぼすか分からない以上、無暗に使うわけにはいかないからな。
そうすると井戸堀メインになるな……。
幸い、俺が住んでいるアライ村は水を汲みにいく以外は、村から出る人はめったにいない。
そのため、村内で水が汲める場所を作れば遠くまで汲みにいく手間が省けるという事でそこまで問題視はされないだろう。
「ヤンクルさん、今は川まで水を汲みにいける状態ではありません。そのため井戸を掘ろうと思います」
俺の言葉にヤンクルさんは頭を傾けてきた。
「……いどってなんだい?」
「簡単に言えば、地下に流れている川まで穴を掘って、そこから水を得る方法です」
俺の言葉にヤンクルは驚く。
「ユウマ君は、どうしてそんなに多くの事を知っているんだい?冒険者をしていた私より詳しいなんて少しおかしいと思うんだけど?」
俺は頷きながら言葉を返す。
「ウカル司祭様に教えてもらいました」
困った時のウカル司祭様頼り。
「わかったよ。ユウマ君が本当の事を話したくないってことは分かったよ」
ヤンクルさんは、額に手を当てながら呆れたように俺に語りかけてくる。
まぁ、俺も膨大な知識が生まれた時から頭の中にあるから、どこまで話していいか分からないし、その知識の中には、地球の戦争や歴史といった物も存在している。
だから情報が大事だと分かっているし、そんなに簡単にこの世界の人間に教える事はできない。
いままで見てきて何となく分かったのはこの世界は、俺の知識にある地球と比較すると1000年以上も前の時代の文明しかないという点。
そんな状態で、一度見れば再現出来てしまう井戸は、世界のあり方を変える可能性もある。
戦争、農業、畜産、生産。今まで川の近く遠くまで取りにいかないといけなかった物が、近場で手に入ってしまうのだ。
この世界の人間が作った技術でない知識が、この世界の社会に与える影響が分からない。
だから本当は井戸だって、掘りたくはない。
だけど、ここで防衛をすると決めた以上、水がないと生死に関わる。
今のままだと食料はあっても水がないなら井戸を作るのも仕方ない。
俺は溜息をつきながら、井戸を何処で掘るか考える。
そして頭の中にある知識を閲覧していく。
たしか、井戸の起源は、地球では紀元前から存在していると言われている。
だが人類史で見るとその歴史は驚くほど浅い。
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