第38話
「冒険者時代に、こんな魔法を使った魔法師を見たことがないよ。これなら村の皆を家に戻した方がいいかもしれないね」
ヤンクルさんの言葉に俺は難色を示す。
現状、ウラヌス十字軍がどう出てくるのか分からないからだ。
何か会った時に村の中心部に集まって居てくれると守りやすい。
そんな俺の気持ちを見透かすようにヤンクルさんが話しかけてきた。
「ユウマ君が考えている事は分かるよ。ひと固まりになっていた方が守りやすいと思っているのだろう?だけど、誰も長い間、拘束されたいとは思ってないんだよ?遠征に出た時も、ずっと日常と違う状況下に置かれれば、それだけ不和の元になるから出来れば村の皆には、ユウマ君の特異性を話して壁を作ったから安全だと説明して家に戻したほうがいい。
これだけの物を作ったと言う事は、もう自分の力を隠す気はないんだろう?なら、もう腹を決めるしかないよ」
俺はヤンクルさんの言葉を聞きながら、自分の考えの甘さに気がつき――。
「わかりました、村の皆には城壁から出ないように伝える方向で、あとは水は堀から取っていただくように伝えましょう」
話しが一段落ついたところで、リリナが近づいてきた。
「ユウマ君。これを……」
それだけ言うと顔を真っ赤にしてリリナは走り去ってしまった。
俺は走り去るリリナの後ろ姿を見た後、受け取ったお弁当を開けると、今日獲ったばかりのイノシシ肉と麦粥が入っていた。
「なんか、気を使わせてしまってリリナには悪い事しちゃいましたね。今。怒っていませんでしたか?」
最近のリリナは俺と話している時だけに。すぐに顔を真っ赤にする。
一時は病気かと疑った時があったが、聞いたら違うよ!この馬鹿!と怒られてから俺は考えを改めた。
きっと俺は嫌われているのだろう。
そう考えると最近、妹のアリアも同じように俺に対して余所余所しい。
どうやら女性に対しては、色恋沙汰のような縁はないようだ。
「別に娘は何も怒ってないと思うよ?というよりユウマ君は、それ本気で言っているのかい?」
ヤンクルさんは呆れた表情を見せながら、盛大に溜息を付きながら俺に話してきた。
「はあ……?」
何を言っているのか今一分からないが、リリナが怒ってないならそれでいいと思う。
「ところでユウマ君、この川の流れる速度だと水を汲むのは難しいと思うけどどうするんだい?」
ヤンクルさんの言葉を聞いて、額に手を当てた。
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