第37話

「それだったら他国に侵攻してこなければいいじゃん?なんだよ、お前らさ……魔王、魔王って言う事聞かなかったら正々堂々とかいうしさ。


数千もの軍勢率いて数百人の村襲ってきておいて何が正々堂々だよ!笑っちゃうんですけど?それと魔王を使おうとか、お前らの宗教こそ他力本願すぎてどうなのよ?


支給品を壊されておこなんですか?激おこなんですか?それに路頭とか言うくらいなら戦争参加するなよな。畑耕したいならさっさと帰れ!」

 完璧すぎる俺の論破に彼らはその目を血走らせていく。

 まったく、どいつもこいつも……論破されてブチきれるとか短気な奴らだな。


「うるさい!異教徒の魔王が!俺たちは世界を救うためにウラヌス様より信託を受けているんだ!」

 一人の神官みたいな奴が叫ぶと回りの男たちが『そうだ、そうだ!異教徒の分際で正論言うとか生意気だ!』とか言い出した。

 正論なら別にいいじゃん……とか俺は思ってしまうが彼らはさらにヒートアップしていく。


「戦わずに守りに徹するとか騎士道すら理解してない未開の人間が!」


「「「「未開!未開!未開!」」」」

 復唱し始める男たちを見て、内心こいつらうぜえと思ってしまう。

 もう仕方ないので俺は壁の上で横になりながら周囲を《探索》魔法で調べながら休息をとろうとすると。


「うああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 濁流に飲まれたままの勇者が俺の目の前を通過していく。

 ご丁寧に大声で叫びながら余韻を残して過ぎていく。

 こいつらはただ嫌がらせをしに来たのだろうか?

 そんな事を頭の片隅に思いながら内心ため息をつき、時折、目の前を過ぎ去っていく勇者を見ながらこれからのことを考える事にした。


 勇者が堀に流され始めてからすでに4時間が経過しており、日が沈む頃になって勇者は外堀の階段に気付き堀からウラヌス十字軍側の方へ上って上がっていった。

 そして、ウラヌス十字軍はというと少し前に、森の中に入っていった部隊が戻ってきたようだ。100人近い兵士達が、どこに隠していたんだと思うほど、たくさんの物資を森から持ち帰っている。

 そしてテントを建てた後に野戦食を作っている。

 本当は食料物資を焼き払って兵糧攻めにするのが一番良いんだが、アルネ王国とウラヌス教国がどういった政治状態で絡みをしているか分からない以上、迂闊に手が出せない。

 俺は、溜息をつきながらウラヌス十字軍の動向を見る事にした。


 ウラヌス十字軍の動向を見始めてから30分ほど経過し。


「ユ、ユウマ君!こ、これは一体?」

 村の方から声に俺は目を向けた。 

 そこには、ヤンクルさんとリリナが立っていた。

 俺は城壁の上から降りると、ヤンクルさんが近づいてくる。


「ヤンクルさん、村の皆の避難はすみましたか?」

 俺の言葉にヤンクルさんは頷きつつも


「一応は村長宅付近に全員を集まってもらった。それよりこれは一体?ユウマ君がやったのかい?」

ヤンクルさんは、俺が作った城壁と堀を見て聞いて来た。。

 俺は頷きながら――。


「やはり、これだけの壁や水が流れる場所を魔法で作るのは珍しいですか?」

 ――と聞くとヤンクルさんは頷いてきた。

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