第34話
「俺は、強大な魔法を操りし魔王ユウマだ!」
俺の宣言にウラヌス十字軍は、動揺を見せた。
壁や堀を瞬時に作った魔法に、彼らの武器を破壊した魔法。
そして名乗りがあるなら、他の村を攻めるような事はしないだろう。
その分、俺がいる村を攻めてくる可能性が上がるが……。
「なるほど……たしかに魔王と見まごう魔法の行使だが……聖女様の予言があったのが11年前。いまのお前はどうみても11歳には見えないがどういうことだ?」
ベンアウードが俺の容姿と年齢が合わないと告げてくるが……。
「分かってないな。矮小な人間よ。貴様らごとき人の身で我を理解しようなと1000年は早いぞ?」
俺の言葉にウラヌス十字軍から感じる雰囲気が変わる。
ただ、ベンアウードや騎士風の格好をしている男達からは歓喜の感情を何故か感じられた。
「なるほど、どうやら私達にも知らない事が多いようですね。ですがこれで聖女様の予言通りだった事が判明したわけですね」
ベンアウードは、顔に笑顔を貼りつけて俺に語りかけてくる。
「ウラヌス教国では、魔王たる君に協力を取り付けたいのだが?一度、聖女様へ会ってもらえるか?」
俺は頭を振る。
会えば俺が魔王ではない事が分かってしまうではないか。
そうなれば妹に危害及ぶ。
それだけは看過できない。
妹に危害が及ぶくらいなら俺が魔王として彼らの前に立ちはだかろう。
「悪いな。俺はお前達に力を貸す気がないな。それにお前らのような狂った宗教に力を貸すのも忌避感を抱くからな。だから俺に協力を得るのは諦めてさっさと本国に帰るんだな」
俺の言葉に、ベンアウード・クルド大司教が何やら衝撃を受けたような表情で叫んでいる。周りの騎士達も俺のあまりの言いようにブチ切れているようだが……別にどうでもいいな。
「クルド様!落ち着いてください。ここが魔王の本拠地ならもっと魔物がいるはずです!」
ベンアウードの周りを固めていた騎士達以外に、近づいてきた騎士が頭に血が上ったベンアウードを語りかけている。
「……だが、しかし……」
ベンアウードに冷静に戦況を分析し説明している男を俺は見る。
その男は、ウラヌス十字軍第三騎士団ユーガス=ガルウと前に名乗った男だった。
だが、ユーガスそれは悪手だぞ?
俺は一人、心の中で突っ込みながらベンアウードに向けて大声で叫ぶ。
「貴様らは何も分かってないな!魔物がいない?違うな!俺には魔物なんて必要ないんだよ。これだけの建造物を瞬時に作り出す魔法を使う俺に魔物が必要だと思うか?」
俺の言葉にユーガスは唇を噛みしめている。
せっかく抑えたベンアウードが暴走すると思っているのだろう。
「お前ら、魔王ユウマを確保しろ!」
案の定、聖女や教会第一のベンアウードが暴走してウラヌス十字軍全軍に指示をだしてきた。
それと同時にウラヌス十字軍の連中が近づいてくる。
武器を破壊したはずなのに何故か、ユーガスは剣を手に持っている。
ユーガスの周囲を固めている男達も武器をもっており、俺は首を傾げる。
どう考えても、彼らが持っている武器は鉄製に見える。
つまりどこかに予備の武器を隠していたという事になるが……。
成るほど。
森の奥に向かったのは武器を取りに言っていた為か?
まったく厄介だな。
俺はすぐに金属結合を解き彼らの武器を破壊する。
「うああああああ、俺の武器があああああああ」
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