第33話
ウラヌス十字軍の数は数千。
いくら堀が皇居並みに作られているとはいえ、このままでは渡ってくる可能性が高い。
まずは、川の流れを早くし渡りにくくさせるために魔法を発動させる。
魔法は、水に干渉し停滞していた堀の中の水が流れ始めた。そのことで、村を円状に囲っていた堀の中の水が循環し始めた。
水が循環した事で、堀を越えなければ城壁は攻略できない。
しかも一つ目の堀を渡り城壁を破壊したとしても2つ目の堀と城壁が存在している。
簡単に突破はできないだろう。
今回は、領主であるイルスーカ侯爵様が来るまで持ち堪えればいいので橋や道を作らなくてもいい。
それにもうすぐ冬で収穫も終わっている。
丁度、立て籠るにはいい時期だ。
持久戦に持ち込んで、相手が音を上げればいい。
俺は堀の中を見る。
《水流》の魔法で干渉操作した堀の水は、時速40キロメートルの速さで流れている。
それに堀の中の水深は、3メートルあり幅も50メートルあることから簡単には突破できないだろう。
そして城壁は、高圧縮した土を使って作られている。
強度はアスファルトと同等。素手ではまず破壊はまず不可能だと思う。
それに、高さ6メートルほどの土壁を登れば、また幅50メートルの水が逆回転して侵入者を待ち構えている。
最後の壁なんて1メートルの厚さがあるから武器を持たない軍隊では突破できないだろう。
俺は城壁の上から、森から出てきた数千のウラヌス十字軍を見る。
見渡す限りウラヌス十字軍は、武器を持たずに整列を始めている。
しばらくすると、ウラヌス十字軍の集団の中から、赤いマントをつけた騎士達を連れた初老の男が進み出てきた。
俺は男を見降ろしながら思いだす。
たしか……ベンアウードという名前だったはずだ。
俺に攻撃指示を出してきた男だったはず。
「これを行ったのは貴様か!?」
その声色からは何かを期待するような感情が見て取れる。
「……そうだったら、なんなんだ?」
俺の言葉にベンアウードはしばらく考えた後に。
「貴様は魔物を扱う事が出来るか?」
「さあな?馬鹿正直に答えると思っているのか?それより他人に何か聞く前に名前を名乗るのが筋だろう?」
どちらにせよ。相手は名乗ってもこないのだから、こっちが素直に答える必要はないし……。
たが、俺の言葉に怒りを露わにしたのはベンアウードではなく赤いマントをつけた騎士達であった。
「―――貴様!不敬であるぞ!この方をどなたと心得る!ウラヌス教大司教ベンアウード・クルド様だぞ!そしてウラヌス十字軍総指揮官であるぞ」
身長190cm近くある体格のいい筋肉隆々の男が俺に向かってイラだった声色で怒鳴ってきた。
服装の形は同じ。ただ色合いが青と違う。きっと赤色の方が高貴だとウラヌス教では決まっているのかも知れない。
まぁ相手も名乗ったんだし、こちらも名乗るのが礼儀というものか。
俺は城壁の上で立ち上がると名乗り返す。
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