第31話

「魔王は、ここではどう言った扱いをされるんですか?」

 俺の質問に男は言い淀む。

 そして話し始める。

 それは……もはや洗脳というか暴力を背景にした従順。

 そして、魔王は覚醒後に巨大な魔力を行使するらしい。

 アリアには、ほぼ魔力は無い。だが、もしそれが覚醒前なら……。


「後は、魔王はどこの国でも畏怖の対象であり殺害の対象になっている」

 俺はふらつくのを我慢する。

 俺がいきついた情報を彼らにヤンクルさんにも渡す訳にはいかない。


「魔王か……。そんなものがまた復活するとは思わなかったけど以前に出現したときには、戦争の引き金になったって冒険者ギルドでは聞いた事があるよ」

 ヤンクルさんの言葉に俺は言葉を詰まらせる。

 さらにヤンクルさんは言ってくる。


「つまりウラヌス十字軍は、戦争で使うための武器が欲しかった。ウラヌス教が欲しがっているのは、力。だからウラヌス教国とって戦争が起きるかどうかはあまり関係なかった。戦争のための戦力を補充するための侵攻だった。そういう事だね?」

 ヤンクルさんの言葉に男は頷いた。

 そして俺もそれを聞いて心の中で溜息をついていた。


「ユウマ君、私は村の皆の様子を見てくるから、しばらく一人で尋問しておいてくれないかな?」

 ヤンクルさんの言葉に俺は頷く。

 だが俺にとって、妹が狙われている事以上、重要な話はなかった。

 しばらくしてヤンクルさんが戻ってくると。『何か分かったのかい?』とヤンクルさんが話しかけてきた。

 俺は冷静さを装いながら言葉を紡ぐ。


「はい。彼らは、ウラヌス十字軍第三騎士団と言っていますが、ウラヌス十字軍の構成としては神殿騎士団30人、司教クラスが数人にあとは冒険者と傭兵に8割は農民らしいです」

 軍人でない人間が8割も侵攻に参加している。

 それは、兵士として訓練を受けてない事を意味する。

 となると、相手からの出方が軍人とはまったく異なるアプローチになる可能性が高い。


「それは……」

 軍人相手なら相手の出方もある程度予想できるが、それが出来ないのがきつい。

 ヤンクルさんもその辺を理解しているからこそ、言い淀んだのだろうか?


「対処はかなり楽になるかもしれないね」


「え?」

 だが、ヤンクルさんの考え方は俺とはまったく別であった。


「ユウマ君、よく考えてみて。農民が騎士や傭兵みたく絡め手を使ってきたり頭を使って攻めてくると思うかい?彼らはそのまま直情的に攻めてくるだけだよ。問題は数だね、8割と言う事は数千の部隊と言う事は、農民の数は4ケタに達するんだろうね。さすがに数で攻められたらきびしい。だからなんとかしないと……だめだね」

 ヤンクルさんの言葉を聞きながら、どうしたらいいか考えていると、《探索》の魔法範囲に無数の赤い光点が表示されていく。。

 それらがあっという間に数を増やしていく。


「ヤンクルさん。ウラヌス教十字軍が侵攻を開始したようです。今は村の子ども達と数人の大人しか集まっていないとおもうので……村の皆に、村の中心である村長の家に集合してもらえるように伝えて頂けますか?」

 俺の言葉にヤンクルさんは頷くが――。

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