第30話

 俺の質問に男は知らないと答えてくる。

 だが一瞬、全員の視線が一人の男に向いたのを見逃さなかった。

 視線が向いた先にいる男の元へ歩いていき座る。


「ここに侵攻してきた理由を聞いてもいいですか?」


「何の事だ?」

 どうやら男は答える気はないようだ。


「これを見てください」

 俺は先ほど、拾ってきた石を男の目線に持っていくと素手で握りつぶして破壊した。

 様子を見ていた兵士達がざわめく。

 俺は微笑みながら――。


「話してくれないと男として大切な機能がこんな風に握りつぶされてしまい大変な事になってしまうかもしれないですよ?」

 すると、『わ、わかった!言う、言うから!』と男から声が答えてきた。

 俺は、男に尋ねる内容を精査していく。

 そして……



「どうして何千人もの部隊を侵攻させてきたんですか?こんな辺鄙な村に……答えて頂けますか?」

 俺の問いかけに男は、一瞬考えたあと


「ウラヌス教会の聖女様は、11年前に魔王が生まれたと予言したのだ」

 11年前?と思いつく。

 近隣の村は、どうか知らないが11年前と言えばアリアが生まれた年では?

 でも同年代の子供が数人はいる。

 もう少し事情を聞かないと判断がつかない。


「他に魔王についての特徴はないんですか?」

 俺はさらに情報を引き出すために話しをする。


「わからない。だが従軍した司教様の話だと……人には無い特殊な特技(スキル)を持って生まれてくると言っていた。過去存在した魔王は、魔物を呼び寄せ使役する力をもっていたらしい」

 ――魔物を呼び寄せる力……。

 それって……。

 妹が傍にいると、よく動物ではなく魔物が近寄ってくる事を思い出した。

 おい……冗談だろう?

 戸惑う気持ちを外に出さないように内に止める。


「そうですか……」

 相槌だけ打っておく。

 つまり最初から妹がこいつらのターゲットだったわけだ。


「それで、もし魔王の力を持った子供が居たとしたらどうしたのですか?」

 俺の言葉に男は考えるそぶりを見せた。


「教会に奉仕するように教育すると司教様は言っていた」

 教育?洗脳だろ?

 お前ら、ふざけているのか?

 一瞬で怒りが頂点に達したが、となりにヤンクルさんが居たこともあり怒りを納める。

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