第22話
これで終わったと思いながら考える。
森の中には魔物や動物が生息している。
武器も防具もない人間にとってそれは脅威と言える。
これでアライ村に攻めてくることはないだろう。――それがずっと見通しの甘い事だと言う事をすぐに知らされる事になろうとは、その時の俺は知らなかった。
俺は念のため、ウラヌス教のことを調べようとアライ村に戻ることした。
道中、一匹だけ3メートルと小ぶりなイノシシを狩り”飛翔”の魔法で村の近くまで戻ると魔法を解除し森から出た。
俺は村に着くと、近隣の事情に詳しい村長に話を聞くためと森で出会った軍の報告をするために村長の家に向かった。
「アライ村長はいますか!」
村長の家は普通の村人の家と違い、いくつもの倉庫が設置されている。
それは収穫した麦や豆を貯蔵する蔵であり財産を管理する金庫でもある。
村人は皆、村長と呼んでいるが仕事の内容は徴税から村の運営までと幅広く、どちらかと言えば代官に近い。
貴族の所領を代わりに治めていて、話よるとこの地を治めているイルスーカ公爵家の遠縁であるとの噂もある。
「どうしたんだ?」
一人の老人が家から出てきた。
「村長。まずはこれを……」
俺はイノシシを村長の前に置く。
「おお、さすがユウマだな。おい!血抜きをしておいてくれ」
村長の言葉に家から跡継ぎである30歳くらいの男性が出てきた。
「あまり調子になるなよ?狩猟くらい誰でも出来る」
男性は俺を一瞥するなり、敵意をぶつけてきたが俺は無視する。
「村長、森でウラヌス十字軍と名乗る男たちを見かけました」
俺の言葉に村長は目を見開く。
「なんじゃと?隣国のウラヌス教国の者かも知れん! くわしい話を聞こう! すぐに中に入ってくれ」
村長の家の中に入るのは初めてだったが、調度品などかなり品質のいい物が並んでいる。
侯爵家の遠縁で代官をしているのなら、このくらいは持っていておかしくないのだろう。
一人考えていると、こちらも老齢の村長の奥さんである、60歳を超えるユカさんがお茶を差し出してきた。
俺は、お茶をもらうと少しだけ飲んでから一息つく。
「それで、どのくらいの数を見かけたのだ?」
アライ村長が、人数を聞いてきた。
自分が見たままの人数をそのまま正確に言っていいか迷うが、何かあってからでは遅い。
一応、無力化はして敗走はさせておいた。
だから、そう悲観的になる事もないだろう。
「俺の見立てでは数千は居ました」
「――数千だと?」
額から汗を流し顔を真っ青にしながら村長はガタガタと震え始めた。
「ただ……様子を窺っていたところ、彼らは元来た山道を戻って行きました。そのため、報告をしようと思いすぐに戻ってきました」
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