第21話

「自分自身を美形とか言える奴って、友達としてはかなり欲しくないなと……」


 俺の言葉に青筋を立てる自称美形勇者。

 体を震わせながら、人抱えある剣を上段に構えて『エアアアアブレエエエエエエドオオオオオ』と絶叫しながら俺に向けて振りおろしてきた。

 振りおろされた剣筋から剣閃が煌めき光が俺に近づいてくる。

、俺はその剣筋から移動して避けた。


「――は?なんで避けられるんだよ!迷宮制覇の武器なのに!契約と違うだろ!」


 その場でユークラトスと名乗った勇者が地団駄を踏んでいる。

 勇者ユークラトスの言葉を聞きながら、俺は疑問を抱く。

 『契約という事』『迷宮制覇武器』という単語に俺は考えていると……。


「ユーガス様、あれはそんなにすさまじい武器なんですか?」


 と発言している兵士の言葉が聞こえてきた。


「いや、あの武器はウラヌス教国が管理している迷宮で手に入る武器の一つだな。自分よりも弱い奴への命中は100%だが、持ち主より強い奴には、攻撃を当てないことで有名な武器だな……」


 俺はユーガスと兵士の言葉を聞きながら、勇者ユークラトス。(笑)を見る。

 すると、『次こそは貴様に当てる!』と息巻いている。

 どちらにせよ、話を聞く限りでは勇者ユークラトスより弱い奴には10割命中を誇る武器のようだから極めて危険だと思う。

 そのまま放置しておくべきではないか。

 正面の敵を見ながら、手を向ける。

 そして金属接合が解けるイメージを頭の中に描いていき、”武器防具分子結合崩壊”の魔法を発動させる。

 すると兵士たちが持っていた武器や防具が次々が崩れ壊れていく。

 それは勇者が持っていた長剣も例外ではなく他の兵士の弓や矢すら次々と壊れていった。


「一体、どうなっているんだよ?」

「魔法なのか?」

「こんな魔法なんて知らないぞ?何かの特技なんじゃないのか?」

「ぼ……僕の伝説の剣が……」

「勇者様!しっかりしてください!」

「くそ!全軍撤退しろ!転進だ!転進!しろおおおおお」


 ウラヌス十字軍第三騎士団ユーガス=ガルウが、一時撤退して軍を立て直そうと大声を張り上げている。

 だが、目の前で起きている武器防具破壊という現実の前には、その言葉は意味を成さない。

 

 俺はさらに軍を迷走させ混乱させるために魔法を編み上げる。

 《風刃》魔法を発動させ極力兵士を傷つけないようにし大木を倒していく。


 さらにそこに”爆音”の魔法を発動させ爆発の音を鳴らす。

 そして”鳴雷”の魔法で稲妻が落ちる音を辺りに響かせ”降雨”の魔法により全体の士気を落とさせる。

 それにより軍の規律が乱れユーガス=ガルウの声は末端まで届かず混乱に拍車がかかる。

 すでに武器や防具を失い統率を失った軍は我先にと逃げ始める。


 あとは軽く大木を倒し伏兵がいるのか?と思わせておけばいいだろう。

 そして、兵士達は村とは逆方向へ逃げ出した。

 俺は一息つきながらユーガスへ視線を向ける。

 軍の統率に手間取っており俺を相手するどころではないのだろう。

 何人かの手勢を連れて森の奥深く……つまり彼らが進軍してきたと思われる方向へ転進していく姿が見える。

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