第19話
それなのにいきなり攻撃をしてくる好戦的な連中を野放しにはしておけない。
少なくとも相手の様子を知る必要が出てくる。
すでに俺の存在は、攻撃された事から見てもバレているだろう。
ただ不思議なのが、灰色の光点の移動速度がそんなに速くない事だ。
だが相手は、100メートル以上前から俺を察知して攻撃してくる手段を持ってる事になる。
それも木の幹を破壊するほどの攻撃力を持っている。
そこから考えても、かなり厄介な相手だということは容易に想像がついた。
時折、飛来してくる矢を避けながら接近すると視界が開けた。
そこには大規模な軍が展開していた
旗が掲げられており、赤い背景に鼠色の剣が描かれている。
正確に俺が居る場所を把握しているのか、数本の矢が飛んでくる。
枝の上に立っていた俺は、矢をかわすために別の枝に飛び移るために跳躍する。
すると、それに合わせてくるように高速で飛来してくる矢がある。
矢を見た瞬間に背筋に寒気が走る。
この矢は、最初に俺を狙ってきたもの。
俺に目掛けて飛んできた矢を空中で体を捻る事でかわす。
さらに、木を吹き飛ばしたのと同等の威力を持つ何か高速で近づいてくるのを探索魔法が感知する。
肉体強化魔法の影響で、強化された動態視力が飛来する銀色の矢を捕らえた。
今度は回避せずに手で矢を掴む。
すさまじい衝撃波が周囲の大気を掻き乱していくがすでに肉体強化を極限まで高めた俺には、通じない。
「ばかな!?この俺の特技を使った攻撃を素手で受け止めただと?」
強化された聴力が声を拾うが、特技が発動した際に魔法陣が展開された様子が見られなかった。
魔法陣が展開されれば、すぐに俺の《探知》魔法が反応するが、それが反応しないということは魔法ではないということだ。
声が聞こえた方へ視線を向けると30代後半の男が弓を持ったまま硬直してるのを見つける事ができた。
俺はため息をつきながら、事象を改変する為の方式を頭の中で組み立てる。
それは風や分子運動の振動を利用しての音を広範囲に届ける魔法
「突然、攻撃を仕掛けてきてどこの国の軍隊だ?」
俺の言葉に、兵士たちの中から派手な飾りをつけた騎士が出てきて大声で怒鳴ってきた。
「俺たちは、ウラヌス十字軍第三騎士団ユーガス=ガルウだ。邪教アース教から村と町を解放するために我々はこうして赴いた。貴様はどこの魔法師だ?アルネ王国では、魔法陣を利用しない魔法運用を可能にしたのか?」
……魔法陣を利用しない魔法運用か……。
つまり魔法陣の運用しない魔法というのは、この世界では一般的ではないという事になる。
「さあな?」
俺の挑戦的な言葉にユーガス=ガルウが眉元を顰めた。そして男は俺に向けて告げる。
「我らの軍門に下るなら手厚く保護してやろう。邪魔をするなら貴様にはウラヌス十字軍の選定により死がもたらされる。さあ、好きな方を選べ!」
それにしてもウラヌス教か……。
聞いたが事ないな?
まあ、ほとんど外部の国々の情報なんて物は、魔法の訓練に明け暮れていて気にしていなかったからな。
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