第18話

 何か動物の話しをしているのだろうか?

 時折、妹とリリナの話の内容が分からない時がある。

 そういう時によく使われる言葉が『妹』『幼馴染』『雌』『発情期』だ。

そんな単語が含まれてくると妹とリリナの会話がいつもおかしな方向へ向かっていく。

 

「わかりません!何を言っているのかさっぱりでーす。リリナさんだってお兄ちゃんに相手されてない事くらい理解したらどうですか?」


 ……ふむ。言葉遊びは結構なことだが……。


「まぁまぁ二人とも……仲がいい事は結構だが……リリナもアリアもそろそろ勉強の時間だろ?リリナも一応は俺の代わりの講師なんだから頑張ってくれよ?」


 まぁ喧嘩するほど仲がいいと言うが、あまりあれだと本当の喧嘩になってしまうからな。

 ここは、幼馴染として兄としてきちんと仲を取りもたないと。

 

「……鈍感……」


「お兄ちゃんは何も分かってないのです」


 仲裁をすると最後にはいつも、鈍感や何も分かってないのですと言われて話をうやむやにされてしまう。


 教会でアリアやリリナと分かれた後、森の中に入り”探索(サーチ)”の魔法を発動させる。

 するといくつもの赤い光点が表示されていく。

 俺は森の奥に向かっていく。

 すると奇妙な事に気がつき、その場に止まった。


「これは……」


 いつもとは違う。

 赤い光点は、俺が知ってる魔物や動物が表示される。

 だが、灰色の光点は俺が遭遇した事がない物を意味する。

 その無数の灰色の光点が頭の中に表示されていた。

 その数はざっと見ただけでも100は下らない。

 放置していては不味いというのが本能で分かる。 

 普段は、あまり利用しない身体強化の魔法を発動させる。

  それにより肉体の細胞強度が急激に上昇し高速戦闘、高速移動が可能になる。

 俺は、10メートル近く飛び上がると木の枝の上に立つ。

 そして木の枝の撓(しな)りを利用しながら、無数の灰色の光点に向けて移動を開始した。

 俺の探索魔法の範囲は3kmほどで魔法に音波を反響させて確認してるに過ぎない。

 だから相手が、どのようなモノなのかを目視しない限り確認できない。

 灰色の光点に近づくに連れ、頭の中に展開されているMAP内に灰色の光点が爆発的に増えていく。

 内心舌打ちをしながら、向かっていると灰色の光点まで残り100メートルを切った所で空気を切り裂いて何かが近づいてくるのを探索魔法が感知する。

 俺は進路上から離れて、近くの木の枝の上に移動する。先ほどまで俺が居た木が幹ごと粉々に吹き飛んだ。


「――なっ!?」


 俺は声を上げてしまう。

 そしてすぐに前方へ視線を向ける。

 なんの予告もなしに攻撃?

 村までの距離は3km程度しかない。

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