第16話
「リリナ、狩猟は男の仕事だ。だからリリナには、ヤンクルさんの奥さんみたく家で俺の帰りを待っていてほしい」
俺の言葉にリリナは顔を真っ赤にして『う……うん』と言ってすぐに自分の家に入っていってしまった。
きっと俺が余計なことを言った事で怒ってしまったのだろう。
それでも、狩猟のことで口を出したり移住してきたばかりの人が村長の家に大勢でいくのは良くない。
だから、ここは心を鬼にしておこう。
「ユウマ君は、天然なのかな?」
そんな俺にヤンクルさんは呆れた顔で語りかけてきたが、俺はこの人は何を勘違いしているのだろう?と内心突っ込んだ。
勘違いも何も俺はリリナが村長の家についていくのは、良い印象を与えないから言っただけなのに天然と言われる意味が理解できない。
そして結局のところ、アライ村長の許可を得ることが出来た。
まぁ、元冒険者であるヤンクルさんも何時かは年を取るわけで俺がその後を継いで、動物とか魔物を狩れればいいと打算から許可が下りたとは思うが。
そして、それからというもの、朝起きて川で水を汲んで道中にいたら獲物を狩り、教会で子供達に勉強を教えた後、ヤンクルさんと共に山で狩猟見習いとして動物や魔物を狩る仕事をした。
その間に得たのは、動物の解体方法や格上の魔物や動物と出会った時の対処法。
山で遭難したときの立ち回り。
森の中で迷子になった時の方角の割り出し方。
食べられる薬草やキノコ、飲める水の見分け方、獲物を追う際の方法など多くの事をヤンクルさんに教えてもらった。
――それから、5年の月日は過ぎた。
「ユウマ、気をつけて行ってくるのよ」
「行ってきます」
もはや母親は諦めの極致に達したらしく何も言わなくなっていた。
ヤンクルさんは、狩猟の仕事をすでに引退しており、俺が狩猟の仕事を引き継いでから2年が経過している。
ちなみに、ヤンクルさんの畑は俺が土壌改良の魔法などを夜中の内に使い少しずつ広げていった場所があてがわれた。
そして畑を持つと言うことは、村民として受け入れられるという事でもある。
ヤンクルさんの家は、村の平均的な家と遜色ない規模に拡張されていた。
そして、台所兼玄関も床は俺が作ったセメントで覆われている。
そして部屋の中の床もきちんとした木材に張り替えた。
俺は家から出ると瓶を持ったまま足に魔力を込め走る。
すると数分で川が見えてきたので、そのまま瓶に水を汲んだ後に、探索魔法に引っかかった獲物に向けて小石を投擲する。
もちろん『疾風螺旋』の魔法を纏わせているので威力は申し分ない。
投擲された小石は、回転しながら丁度茂みから出てきたイノシシの脳天を貫き即死させた。
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