第15話
「……母さん、ごめん。俺は身を守る力がほしい。だからヤンクルさんに動物や魔物を狩る方法を教わるために弟子入りしたんだ」
「……え?……」
母親は俺の言葉を聞いて信じられないと言った表情で数歩下がった。
そんな母親を支えたのは父親だった。
「ユウマ、猟師見習いになるってのは本当なのか?」
俺は頷いた。
「前から問題を起こすとは思っていたが……。分かった、好きにするがいい」
父親は、以前から俺の事をあまり構っていなかった事もあり放任主義なのかすぐに許可を貰う事が出来た。
「――貴方!そんな事を簡単に決めたら……」
母親は反対しているが、普段は俺の言い分を聞かず、何か問題が起きれば俺が悪いと決めつけて一方的に叱ってくるし、問題が起きるまで、好き勝手にしてればというスタンスなのにこういう時にだけ反対されると困る。
きっと忌み職である猟師の仕事を子どもにされる事で、周囲の大人から良く思われない事に忌避感を抱いているのだろう。
「仕方ないだろう?ユウマは以前から自分が決めた事を曲げるような事はしないのだから。だから……ユウマ。無理はするな」
俺は父親の言葉に頷いた。
「――私は反対です」
いつもは父さんの意見を尊重する母さんとは思えないほど、即断で反対してきた。
冒険者になるためには、元冒険者であるヤンクルさんに弟子入りをして学んだほうがいいと一晩かけて説明をしたが結局、母親の説得には失敗した。
終始、私はあなたのことが心配なのよと聞く耳を持ってくれない。
でも母親が言っている言葉が嘘だって事くらいは分かる。
何故なら、あれだけ蔑んでいたヤンクルさんの家に俺が入り浸ることになるのだ。
母親としては、周りの目もあるから、断固として反対しているのだろう。
だから、もう母親を説得する事は諦めた。
俺は母親に「行ってきます」と言って家を出たが母親は言葉を返してくれなかった。
「……」
母親は不機嫌さを隠そうとしていない。
まあ、父親の話だと年齢はおそらく20台後半なのだからまだ若く気持ちの整理がつかないのだろう。
俺は水が入っていない瓶を持ち上げるといつもどおり川まで水を汲みにいき、道中にいたウリボウを狩り家に戻った。
そして教会で子供たちに勉強を教えるという講師活動を終えた後に、ヤンクルさんの家にリリナと一緒に向かった。
リリナの家に着くとヤンクルさんが待っていた。
「こんにちは、今日からよろしくお願いします」
「…ああ、私が冒険者時代に学んだ事をなるべく教えられるようにがんばるよ」
ヤンクルさんの話し方は、とても腰が低い。
「それじゃ、村長に君が私に弟子入りした事を説明しないと駄目だから着いてきてくれるかい?」
「わかりました」
俺は頷きながら歩き始めたヤンクルさんについて行こうとすると、
「お父さん、私も一緒に行っていい?」
後ろからリリナがヤンクルさんに懇願してきた。
俺はそれを見ながら、リリナも親の後を継ぎたいのかと思いつつリリナに語りかける。
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