第14話
「……なんだい?」
「この巨大熊……タルスノートでしたっけ? こいつはヤンクルさんが狩猟で倒した事にしてくれませんか?ほら、俺とか目立ちたくないですし」
「君はもう十分、村で目立っているよ? 村に魔物を呼んできたり勉強を教えたりしているじゃないか……」
ヤンクルさんが何か言っているが聞かないことにする。
「ほら、これとか倒せる実力がある猟師なら村でも風当たりが強くならないと思いますし。早く畑とか貰えるかも知れませんよ?有能な人材を外部に出すほど愚かな村長とか居ないと思いますから」
きっとたぶん大丈夫だろう。
あのアライ村長の事だから、保身に走るからなあの人。
有用性を見せ付ければ間違いなく大丈夫だろう。
「……そうかな……」
「きっとそうだと思います」
まあ駄目だったら最悪、きちんと話せばいいし。
「わかったよ。君が今回、妻と私を助けてくれたんだ。だから君の言うとおりにしよう」
「ありがとうございます」
俺はヤンクルさんに頭を下げて、その場に巨大熊を置いて家に戻ろうとしたところで腕を掴まれた。
掴んだ本人へ目を向けると、そこには顔を真っ赤にしたリリナが潤んだ目で俺を見てきていた。
そしてはにかむような笑顔で
「ユウマ君、ありがとう」
今まで見た事もないような感謝が込められた顔で俺にお礼を言ってきた。
いつもとは違って素直な幼馴染の頭の上に手を置いて語りかける。
「気にするな。俺のためだから……」
俺の言葉にリリナはますます顔を赤くしていく。
そんな俺とリリナの会話を、奥さんを抱いたままのヤンクルさんは、ジッと見ていた。
視線から何とも言えない感じが伝わってくる。
きっと、娘を取られたと思ったのだろう。
それから俺は、自宅に戻った。
前からの望みであった魔法の練習場所が見つかった事もあり今日の俺は機嫌がいい。
だが、いつもより帰宅が遅かったからか母親は俺に抱きついてきた。
「こんなに遅くて心配したじゃない。村の人から聞いたんだけど、ヤンクルさんの家に行っていたんだって?猟師をしているヤンクルさんの家にはあまり近づいたら駄目よ?村から変な目で見られてしまうから」
母親は心配するように俺に語りかけてきた。
でもその言葉には従う事は出来ない。
俺には俺の目標があるからだ。
強くなって、村を発展させるという目標が。
だから……。
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