第13話

巨大熊を撃退した後、俺はリリナの母親であるユニイさんを背負いながら右手で4メートル近い熊を引きずり森の中を歩いた。

 

――そして1時間後


 森から出てきた俺を出迎えたのはリリナとリリナの父親であるヤンクルさんだった。

 二人は俺の姿を見るとすぐに走って近づいてくる。

 そして近くまで来ると。


「――え?これは……」


「……ユウマ君?」


 と二人とも言葉にならないようだった。

 

「すいません。ユニイさんを背中から下ろしたいので手伝って頂けませんか?」


 身長130cmほどの俺が150cm近い身長のユニイさんを背負ってきたのだ。

肉体強化のための魔法で神経を使い精神的に疲れてしまっていた。


「……あ……ああ、分かった……」


 動揺しながらもヤンクルさんはユニイさんを背中から下ろしてくれた。


「……これって……お父さん……タルスノートだよね?」


 リリナが俺が引きずってきた熊を指差しながら父親であるヤンクルさんに聞いている。

 ヤンクルさんも『ああ……そうだね』とどこか遠くを見ているような目で奥さんを抱えていた。

 何はともあれ、これで正式に俺はヤンクルさんの弟子という形になって魔法の修業を大手を振って出来るようになった。


「ヤンクルさん、明日から狩猟のご鞭撻の程、よろしくお願いします」


「……え?教える事があるのかな……?」


 とてもヤンクルさんが気弱な発言をしてきた。


「大丈夫ですよ!俺なんてまったく薬草とか知りませんから!その辺りを教えてくれると助かります!」

「……君、魔法使えるよね?……」


「ヤンクルさん!薬草採取は冒険の基本です?それに魔法は万能ではありませんし」


 そう、俺の魔法は万能ではない。

 地球の科学力、つまり俺の知識に沿った内容でしか発現させる事が出来ない。


「……そうなのかな?」


「はい!だから明日からがんばりましょう。ドラゴンとかと戦えると尚良いかもしれません!」


 以前は、アリアを助けたときに20メートル近いワイバーンを倒した事があるから、それより強いと魔法の練習になる。


「……そんなのが来たら国が滅んじゃうから……」

「またまた、そんな気弱なー」

「ドラゴン?ドラゴンって見た事ないよ?ドラゴンって金銀財宝もっているんだよね?」


 俺とヤンクルさんの話し合いを聞いていたリリナは、ドラゴンはお宝を持っているものと思い眼を輝かせていた

ちなみに、女性では、森で狩猟の許可は下りない。

 唯一女性でも、狩猟許可が下りるのが冒険者のみで登録が可能になるのが成人の15歳からだ。

 だから今のリリナでは狩猟に参加は出来ない。

 リリナが俺を見てきて連れていって! と、瞬きで合図をしてくるけど連れていけないものは連れていけない。

だからそんな目で見てもだめです。


「そういえばヤンクルさん」

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