第8話
リリナに案内された家は、外見上立派とはとても言えなかった。
文化レベルが中世よりも劣るこの世界において家は木造で作られているのが基本で、レンガなどが使われているのは地方だと領主などの館くらいだと聞いた事がある。
「ユウマ君、少し待っていてくれる?」
家の戸口まで案内された所で、リリナにそう言われて俺は頷く。
きっと両親に俺を紹介することをまだ説明してないのだろう。
しばらくするとリリナが戸口から出てきた。
「ユウマ君、入ってきて」
「わかった」
俺は返事を返しながら戸口の立て付けの悪い木製のドアをスライドさせて家の中へ足を踏み入れた。
そして想像以上に汚いというよりも汚れている家の中を見て、表情には出さなかったが内心ではため息をつく。
外から見ていて気がついてはいたが、家の中に入るとよくわかる。
窓がほとんど無かった事から家の中は薄暗く台所の床が地面だったこともあり土ぼこり臭い。
俺は、自分が考案して作った草鞋を脱ぐと部屋の中へ上がった。
部屋の床は木で作られているが、品質が悪い木材が使われているためか軋んで音をたてる。
猟師は、風あたりが強いとは聞いてはいたが、ここまでひどい扱いを受けているとは思わなかった。
父親の話だと俺が住んでいる家が平均的な地方の農村の家だと聞いていただけに部屋数も2つしかない家を見て外部からの移住者には厳しい世界なのだと改めて現実を知らされているようで悲しくなった。
リリナに案内されたのは一番奥の部屋で一つだけ存在する窓が光を取り入れて部屋の中は少しだけ明るく感じた。
そこに置かれてる布団の上では男性が寝ていた。
男性は、前に俺が見た時より老けているように見える。
以前、引っ越してきた時は、ここまで頬がこけるくらいまで痩せてなかったと思う。
それに着ている服も所々、擦り切れている。
色合いもかなり抜けてきており、状態がいいとは思えない。
布団の合間から見える腕もかなり細い。
きちんと栄養は取れているのだろうか?と心配になってしまう。
俺が来た事に気が付いたのか、視線を俺に向けたあと、ヤンクルさんは上半身だけを起こした。
「こんな格好で、すまないな……ユウマ君。5年ぶりくらいか?」
ヤンクルさんの言葉に俺は頷く。
遠くからヤンクルさんの姿を見た事はあったがこうして話すの5年ぶりくらいだからだ。
「実は君にお願いがあって……ゴホッゴホッ」
途中でむせたヤンクルさんは、口元に手を当てて咳をおさえた。
症状は見た限り、かなり悪そうに見える。
今の状態だと、話しているのも辛いと思い手短に話を終わらせることにした。
「それでお願いとは何でしょうか?」
ヤンクルさんからのお願いが今一、分からない。
俺のような子供ができる事なんて知れているだろうに……。
そう思っている俺に。
「実は、娘に狩りの仕方を教えてもらいたい。君が毎日のように、妹さんと川へ水を汲みに行っている時に、近づいてきた動物を狩っているのを私はずっと見ていた。だから娘に狩り方を教えてくれないか?」
俺はヤンクルさんの言葉を聞いて考える。
基本、女性が森に入る事は禁止されている。
なのに、リリナに狩り方を教えていいものか?
というより。俺の狩り方とか魔法を使っているからリリナには無理。
だからここは。
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