第6話

 だけど、それを顔に出したりしない。


「分かりました。本当に頼みましたよ? 私は徴税書の名簿を作りますので……くれぐれも! 教会の方針を批判するような内容には触れないようにしてくださいね。それとユウマ君、そろそろアース神教に入る気はありませんか? 君なら……」


 ウカル司祭様司祭様が、勧誘の言葉を口にしてくるけど、俺としてはあまり教会には興味はないんだよな。

 俺の知識の中にある宗教はいつも何かしら問題を起こしているからな。

 しかも、ウカル司祭様みたいな人がいっぱいいるような宗教とか、すっごく疲れそうだ。

 だから、アース神教に入ることはないかな。


「申し訳ありません。俺はあまり宗教には興味はないので」

「そうですか。ですが、他ではあまり言いふらさないようにお願いしますよ? 教会からの誘いを断ったとなったら異端審問会にかけられるかも知れませんから。私ですから大目に見ているだけですからね」


 俺が住んでいるアルネ王国の国教であるアース教は、積極的に優れた子供を勧誘している。

 給料もよく身分もしっかりしている教会の勧誘を原則、断る人はいない。

 断るのは、アース教以外の宗教を信じてる人間であり、そういう人間は異端審問会にかけられる。

 面倒な世界だとつくづく思う。

 俺はそんな事を考えながら。


「わかっています」


 ウカル司祭様が毎回注意してくる言葉に頷きながら、奥の部屋にその後姿が消えるのを確認して子供達を見る。


「えーと……この3ヶ月間で大体、ひらがなを理解頂いたと思いますので今日からは算数の勉強をしていきたいと思います」


 俺の言葉に生徒である子供達は、木板の上に砂を敷き詰めただけの簡易黒板を取り出して俺へ視線を向けてきた。

 そして、俺は現代算数の知識の基礎である足し算と引き算をまず教えることした。

 虚無の時間はあっという間に過ぎて、子供達の脳が柔らかいのもあるのだろう。

 足し算を覚えられた子供が何人かいた。

 明日も足し算と引き算を教えればいいかなと思いながらも、『ユウマ先生! ありがとうございました』と同年代の子供達にお礼を言われて俺は手を振って分かれた。

 そして俺も帰ろうとした所でウカル司祭様に、『ユウマ君、本当に教会に入りませんか?』とまた勧誘を受けた。

 やんわりと断ってから教会を出て家に戻る途中で……。


「ユウマ君! ちょっといいかな?」


 振り返るとそこには出会った5歳の頃から、いつも俺にだけは暴力を振るってくる幼馴染のリリナが立っていた。

 こいつはいつも、最後には口調が速くなって顔を真っ赤にして俺を殴ってくる癖がある。

 しかもその時は、ユウマの馬鹿と言って走り去っていくから性質が悪い。

 10歳と俺と同年代の年齢にもかかわらず彼女は細い金色の睫に金色の長い髪と整った容姿にきめ細かい肌。さらには綺麗な声と非の打ち所の無い美幼女であった。

 服装も、けして裕福とは言えないリリナのお父さんがリリナのために無理をして揃えたのか、白い布地のワンピースを着ていて、村では少し浮いてる格好をしている。


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