第5話

 なので食い扶持と領主に払う納税金を別で稼ぐ必要が出てくる。

 そのため、死亡率が極端に高い森の中に分け入って動物や魔物を狩る仕事をすることになるのだ。

 さらに言えば、アース教会は無理に命を奪う事を推奨していない。

 そのため、動物や魔物とはいえ命を奪う職業である狩猟者に向けられる目は冷たい。

 生きていく上では、肉に含まれているタンパク質は必要なのに、この世界の人間はそれを理解していない。

 命がけで取ってきているというのにどこの村でも狩猟者の立場は低い。

 報われない職業だ。

 父親が食事を食べ始めると同時に、俺も木皿によそわれた肉が入った麦粥を頬張る。

 素材の味が引き立っていて……といえば聞こえは良いがかなり薄味で正直なところ微妙だが10年もこの世界で暮らしていると慣れてしまう。

 腹が減っているのでとりあえずおなかに掻っ込む。


「ご馳走様」


 俺は、木製のコップと皿を台所の流し台に下げると用意していた荷物を手に取る。


「今日も、教会にいくのか?」


 父親が聞いてくる。


「うん。ウカル司祭様と決めてるから」


 俺は父親に言葉を返しながら家を出た。

 今は、日本でいうと午前7時頃で10時まではアース教会の教義で虚無の時間に相当する。

 虚無の時間というのは、簡単に言えば神様が決めた休憩の時間らしい。

 その時間は、親の手伝いをしている子供にとって責務から解き放たれる時間であり教会の教えを聞く時間でもある。

 家の周囲に広がる畑の中の道を通りながら歩くと5分ほどで教会が見えてきた。

 教会と言っても俺の記憶の中にある装飾煌びやかで荘厳な教会ではなく、この世界のものは木で作られた簡素な掘っ立て小屋みたいな建物だった。

 木製の両開きの扉を開けて中に入ると、すでに俺と同年代かそれより下の年齢の子供が10人ほど教会内の木造の長椅子に座っているのが確認できた。


「おはよう」


 俺が手を上げて挨拶すると俺の姿を見た子供たちが『おはよー』と言葉を返してきた。

 そして、そんな俺達を見た唯一人の大人であるウカル司祭様は、あまりいい顔をしていなかった。


「ウカル司祭様、おはようございます。今日もよろしくお願い致します」

「……今日も来たのですね。あまりここを子供たちの集会所にしてほしくないんですけど」


 と、言いながらウカル司祭様は俺を見てきた。


 子供たちと話すときに目線を子供の高さに持ってくるのはさすが司祭というかあざといというか。

 でも、男がやってもポイントは上がらないんだけど。

 そしてウカル司祭様は、アライ村が出来た当初から、この村のアース教会にいるらしく誰からも一目置かれてる存在だと両親が言っていた。

 よくは知らないが、俺が生まれる前はアライ村は、魔物に襲われた事があって、その時ウカル司祭様は頑張ったとか頑張らなかったとかそういう話を聞いた。

 まぁ話を1割としても、両親はそこそこウカル司祭様に信頼を寄せていた、

 俺からしたら、村人の話をうまく話を合わせて問題があったら、それはアース神様からの試練ですとか神様に転用してうまく立ち回ってるだけのセコイ大人にしか見えない。


「まぁまぁ、ここですごい才能のある子供を何人も見出せばウカル司祭様の出世も間違いないですよ! もしかしたら本部の大司教にもになれるかも知れません」 


 俺の言葉にピクッと眉を動かすウカル司祭様を見て、俺は内心ほくそ笑む。

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