第3話
「おにいちゃーん」
今年、6歳になる妹が俺の後を追ってついてきた。
ふわふわの金色の髪の澄んだ青い瞳にぷっくらとしたほっぺ、将来は美少女に育つこと間違いない逸材だと俺は思っている。
問題は、アリアは小さい頃から同じ布団で寝ている事もあり、6歳になってからも一緒に寝ないと泣いてしまう。
仕方無く俺は、いつもアリアと寝ているのだが、その都度アリアが抱き着いてきて甘えてくるから困ったものだ。
「アリア、あぶないからついてきたらだめだろう?」
俺は頭の上に瓶を載せたまま、しゃがんでアリアの頭の上に手を載せ目線を合わせた。
「私も! 私もね……お兄ちゃんのお手伝いがしたいの!」
ギュッと俺の服の裾を掴んで、潤んだ目で上目づかいで俺を見上げてくる妹を見て……。
どうしようかなと思ってしまう。
あまり妹が、俺依存になってしまっても困ってしまうし……。
でも、甘えてくるのは子供のうちくらいなものだろう。
きっと思春期になったら、お兄ちゃん嫌い!とか言ってきそうだ。
うっ……心が痛い。
言われたらワイバーンに八つ当たりしよう。
今は、とりあえず一生懸命全力で可愛がってやろう。
「そうか、そうか……アリアはかわいいな」
俺は妹のアリアの頭を撫でながら、道端に転がっていた小石を拾う。
妹のアリアが俺を追ってきた方角をふと見ると茂みから魔物の一種である一角ウサギが顔を出して妹を見ていた。
俺は、発動させたままの《肉体強化》の魔法の精度を一気に引き上げる。
そして、一角ウサギの顔目掛けて小石を指で弾く。
小石は凄まじい速度で一角ウサギの頭を貫通し即死に至らしめた。
「アリア、あそこに一角ウサギがいるから今日はそれを運んでくれないか?」
「お兄ちゃんすごい! やっぱりお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだね!」
妹は、もじもじしながら俺に話しかけてくる。
しかも顔を薄らと赤く染めている。
「お、おう……」
ちょっと俺を持ち上げすぎなのではないだろうか?
俺の反応に妹は満足げに頷くと。
俺が指差した方向へ、嬉しそうな顔で妹がトコトコ歩いていき、一角ウサギの角を持って引きずってきた。
妹は魔物に好かれる体質らしく、妹が森に入るとめったに現れる事の無い魔物すら引き寄せる事がある。
俺は妹と一緒に行動している時、魔物の挙動がいつもと違う事に疑問を抱いていた。
俺だけの時は、すぐに攻撃を仕掛けてくるのに妹がいると何故か攻撃をせずジッと妹をみているのだ。
ただ、原因が分からない事もあり放置していた。
いつか妹の体質が原因で村の人達に嫌われたとしても、俺にとっては、どんな体質でも大切で大事で可愛いには違いない。だから、どんな魔物を引き寄せようと、この俺が守ってやれば問題ない。
妹と一緒に、しばらく歩くと水のせせらぎが聞こえ川が見えてきた。水を瓶に汲んでから家に戻った。
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