4-4 見透かされた手札と予知されるドロー

蓮丈院 AP0 VS フェズ・ホビルク AP0



「先攻は俺だ! ドローフェイズ!」



 まさか、いきなりラスボスと対決する羽目になるとは。


 対策どころか心の準備すらままならぬまま、ぶっつけ本番の真剣勝負につきあわされ、デッキに触れる俺の手が震える。



「このドローで引くカードは――アクシデントカード〈強制リクエスト〉」


「――⁉」



 小刻みに揺れる指先がやっとデッキトップから一枚を抜き取れた時、俺が表面を確認する前にフェズが無機質な語勢で割り込んだ。


 慌てて六枚目の手札に目を落とすと、宣言されたとおりのカードを俺は握っていた。



「そしてあなたの手札にあるのは――


 コスチュームカード〈エヴォルスワンワンピ〉


 アクシデントカード〈桶底の一枚布〉」


 アクセサリー〈トワイライトホーンヘアアクセ〉


 ミュージックカード〈武曲:瓦割人形〉


 アクシデントカード〈バニラエッセンスの洗剤〉」



 ドローで引いたカードだけじゃない。


 開幕で引いた五枚の手札の中身まで正確に言い当ててゆく。


 予知したというのか?


 それとも、盗み見たのか?


 相手のステージには、能力の源に該当する特殊なカードなどまだない。


 つまり、反則じみた方法で。


 しかし、監視カメラといった機械類はこいつ自身が機能を封じているはず。


 歩道鏡とかガラスの反射で見るのも無理がある。


 いや、そもそも俺を閉じこめたこの人気の無い空間そのものが奴のテリトリーだ。


 どこから監視されてもおかしくないということか。


 なにやら全身が視線という見えない触手で舐め回されている感覚が拭えないが、ここで何かを訴えても仕方がない。


 全部お見通しなら、いっそのこと出し惜しみをしないまで。



「俺は〈ブラッデルセン エヴォルスワンワンピ〉をコーデ!」



 開幕から蓮丈院遊月のエースコスチュームを出すが、ここはむやみに覚醒をさせない。


【飾血】――俺の血を与えるまでは、色も能力も無い通常コスチューム。


 それ故に、様々なカードのサポートという恩恵も受けられる。


 それに、奴がラスボスなのはわかっているが、肝心な部分が未だに封印されているためなのか、どんな戦略をしてくるか思い出せない。



「俺はカードを一枚準備して、ターンをチェンジする」



 ここは下手に攻勢をとるよりも、ひたすら守って戦略を読みとるのみ。

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