3-6 マスコット〈ジェネトモ〉
蓮丈院遊月 AP1250 美澤マイリー AP1200
「あたしのターン、ドロー!」
二度目の手番が周り、僅かだがAPが低い美澤が改めてカードを引く。
「……ッ!」
新たに加えられるカードに目を移した時、美澤の目が一瞬だけ見開かれた。
何か良い札をひいたのか、さっきまで険しくゆがんでいた口が動く。
こちらには聞こえない何かを独り口にしたまま。
「あたしはミュージックカード〈マスコットの産声〉を発動!」
「ま、マスコットだと!?」
唐突に口に出された意外な単語に、今度は俺が驚愕された。
「このカードが発動した時、あたしのデッキからマスコットカードを一枚手札に加える!」
そのカードの発動を皮切りに、美澤のデッキから待ってましたといわんばかりに謎の輝きが放ち始める。
「来て! バヨネ!」
手を掲げる美澤の声に応じて、デッキから一枚のカードが閃光となって飛び出した。
混雑したデッキの中から望みの一枚を手に入れるサーチカード。
便利だが同時に相手にも公開しないといけない、おおよそデメリットとはいえない欠点がある。
サーチした以上、対戦相手である俺もみる権利がある。
だが、掲げた美澤の手にはどうみてもカードではない何かが乗せられていた。
元はカードのはずだが、そいつは手乗り程度の大きさをした生き物っぽいなにか。
後光でよく見えないが、あの胴体はどうも車か精密機械に搭載するジェネレーターっぽい何かにしか見えない円柱状の胴体。
それに飾りをつけたように、犬であることを強引に主張する犬ぽい手足と耳。
明らかにゲームセンターで景品にふさわしいデザインをしたマスコットであはる。
どっかの県によって繁栄の宿命と血税かけた責任を背負わされて生まれたゆるキャラではないのは確かだ。
「バ~ヨ、バーヨネッ!」
派手な演出とともに呼び出された動力犬は、鳴き声を発しながら美澤の手から降りて、肩へと定位置を変える。
これまでに何度もまか不思議な体験をしてきたんだ。
もう、エイリアンとシガニーが公共放送でフルハウス並のコメディドラマ番組が放送されていると言われても驚かない。
「さぁ、行くよ! バヨネ!」
「バ~ヨネッ!」
目を合わせた美澤とバヨネが意気を揃えた途端、バヨネは大きく飛び上がった。
「あたしは〈ジェネトモ バヨネ〉を〈ヴェルデバスワンピ・コルト〉にマテリアルコーデ!」
「マスコットを着るのか!?」
頭上高く飛び上がったそいつは、宙できりもみ状に回転し、美澤の背中へと突進する。
明らかに衝突レベルの一撃に見えたが、美澤は動じず背中でマスコットを受け止めた。
同時に、ガチンと何かがしっかりとかみ合う音まで響きわたる。
背中では本当に何が起きているのか、白煙を勢いよく噴射する音から、歯車的な何かが高速で稼働している音までもが聞こえてくる。
その何かの正体は見えずじまいだが、盤上では数値は確かにあがっているのだけは確か。
「〈ジェネトモ バヨネ〉の効果! バヨネがコスチュームと一体化した時、ランドリーに置かれた〈ヴェルデバス〉シリーズ一着を、マテリアルとして追加コーデする!」
「ランドリーから追加コーデだと!?」
現れたマスコットが美澤のCOMPを再度輝かせ、ランドリー用の挿入口から一枚のカードが飛び出した。
一閃の光となったカードは、具現化するまもなくそのまま美澤の着ている衣装の中に吸収されてしまった。
一瞬だけ見えたカードの絵柄は、美澤が今着ているのとよく似ていた。
今の追加召還で、俺は改めて現在の数値差を暗算する。
美澤のランドリーに置かれたコスチューム。
たしか、破壊を防ぎたいステージ上のコスチュームと同じAPを持つ衣装を生け贄にすることで破壊を免れるアクシデントによって、確実に一枚送られていた。
そして今、マスコットを呼び出された上に、そいつの効果で、捨てたはずの同じAPを持つ衣装が再度ステージに舞い戻ってきたということは……
蓮丈院 AP1250 VS マイリー AP2500
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