3-5 コンビ―ネーション、縮めてコンボ
「………………!」
さっきまで小馬鹿にしていた美澤が、色づいたエースカードの登場を前に身構える。
いきなり閉口してしまうほど、警戒しているのだろう。
「さらに俺はミュージックカード〈二十歳の紫鏡〉を発動!」
衣装に次いで場に出したのは、音符フレームに囲まれたミュージックカード。
二十歳までに覚え続けていると云々という階段話をモチーフにしたのだろう、まがまがしい紫鏡のイラストが描かれたカードだ。
「このカードは、持つことでアピールポイントを150下げてしまう呪いの紫鏡トークンを追加でマテリアルコーデさせる!」
「あたしに鏡を持たせて、ポイントを下げようって戦略か?」
「という戦略もある。だが、このカードが鏡を持たせるのは、何も相手に限られてはいない!」
壁のごとく宙にたたずむカードが改めて光を発しながら消滅すると、強制的に俺の手に紫色の手鏡を持たせる。
この時点で、俺のAPは150ポイントも下がってしまう。
数値的にみれば、せっかく相手よりも優勢に高めていたのに、自ら下げるなど旗からみれば嘲笑もののプレイングだ。
「蓮丈院の衣装にマテリアルがッ!」
煽るどころか、焦りを見せる美澤。
ずいぶんと蓮丈院遊月のことを観察していたのか、優勢の台座を譲られたのに顔を険しくさせる。
「中途半端にAPを下げるよりも、こうする方が効率いいんでね。おまけに実質無償でマテリアルが追加でコーデされるこの効果なら尚更だ。どうせ、ポイントを下げる呪いの鏡も、すぐにお役ごめんになるんだからな」
「コンボ……。蓮丈院の奴、ここまで記憶が復帰していたのかッ」
コンボ。
予感の通り、これはカードゲームではおなじみのカード同士のコンビネーションの布石だ。
「そして俺は〈エヴォルスワンワンピ〉の効果を発動」
宣言と同時に、俺は紫鏡を柄から鏡本体へと持ち替えてから容赦なく握りつぶす。
細かく砕けた破片を握る拳から、真っ赤な炎が燃え上がる。
「このカードは、マテリアルとしてコーデされたカード一枚をランドリーに送ることで、相手ステージ上のカード一枚をランドリーに送らせる! 標的はもちろん、その〈ヴェルデバスワンピ〉だ!」
狙いをらいを定めるなり踏み込んだ俺は、一っ飛びで美澤まで肉薄する。
引き絞った焔の鉄拳が、草を模した柄の衣装を焼きに迫る。
「させるか! リバースカード展開!」
寸前のところで、美澤が準備していたカードを起きあがらせる。
目の前で立ち上がったそのカードは、一瞬でボロボロの歩兵装備をかけられた無様な案山子へと姿を変え、そいつを俺に殴らせた。
「身代わりか!」
「アクシデントカード〈デコイスケアクロウ〉。こいつは〈カラミリタリティー〉ブランドのコスチュームが破壊される効果が発動した時、狙われたコスチュームと同じ数値のAPを持つコスチュームを手札からランドリーに送ることで、その効果を無効にする!」
焼け焦げながら崩れ落ちる案山子とともに俺の手にたぎっていた炎も燃え尽きる。
不発に終わったものの、仕方なく俺は元の位置へと引き下がる。
「俺はカードを一枚準備してチェンジだ!」
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