3-4 【飾血】
蓮丈院 AP0 VS マイリー AP0
「先攻はあたし! ドロー!」
開幕の号令が終わった言下、最初のドローフェいずが回ってきた美澤が、デッキからカードを一枚手札に加える。
「あたしは〈カラミリタリティー ヴェルデバスワンピ・コルト〉をコーデする!」
手札から選ばれた一枚が黄色い読込板に乗せられると、とつぜん美澤の上半身が虹色に光に包まれ始めた。
一瞬の膨張の後、溶けた光の中で、美澤の服が控えめなブレザー姿とチェックのプリーツスカートに変わっていた。
コーデ。
初手から美澤に着せられたのは、いきなりトップスとボトムスを兼ねるワンピース。
そのAPは1200とやや限界の半分に近い。
ただ、おおよそワンピースにしてはメッシュで染めるには似合わない深緑と緑かかった白というミリタリー迷彩を彷彿とさせるカラーリングだった。
「あたしは最後にカードを1枚準備して、ターンをチェンジする!」
まだ効果を発動させる条件が整っていないのか、美澤は何か能力を秘めているだろうワンピースを出すだけにとどめ、ついでに対策となるカードを裏向きのまま追加で出して手番を俺に明け渡した。
妨害させる罠か、それとも一張羅を守る防御か。
警戒はしつつも、俺は訪れた自分の番に従う。
「俺のターン!」
同様にデッキから一枚引いて、新たに手札として迎える。
前よりはバランスの取れた手札の内容だ。
防御と強化、どちらもいける。
その中で、遊月にとって一番のエースまでもが手の中にあった。
いきなりくるとは幸先がいい。
「よし、俺は〈ブラッデルセン エヴォルスワンワンピ〉をコーデ!」
人の目の前で派手に着替えた美澤に次いで、俺もCOMPのシステムに従ってカードに描かれた衣装に着替えさせられる。
これで俺もカードの絵とワンピースを着ることになった。
ただし、カラーリングを除けば。
「蓮丈院遊月が纏うエースカードがいきなりおでましか。でも、使い方まではしっかりおぼえているのかな?」
どんなに色合いがひどくてもさすがは養成所エースの衣装。
知れ渡った名前故に、相手も安易に侮ったりしない。
「バカになったからって、舐めるなよ」
使い方は十分に学んだ。
後は実践で使いこなすだけ。
俺は童話の子家鴨よりも醜い色をした衣装の襟に備えられた突起を押し倒す。
「俺はこの衣装に、俺自身の血を与える!」
突起を倒しから一拍置いて、首筋にチクリとうめくほどでもない小さな刺激が走る。
飛び出した針が微細な血を噴射させたのだ。
乾いた唇の皮をむいた時よりも小さい傷跡から、蛇口から垂れる滴よりも小さい一粒の返り血が、襟首へと跳ね返る。
衣装が着主につけたキスマークから飛び出した、ほんのわずか一滴。
それが衣装に染み着いた途端、白鳥の名を冠する衣装が覚醒する。
開眼する瞼に変わって、徐々に元の焔色へと染めあがってゆく布面。
変色した箇所から陽炎まで羽衣のように帯び始める。
【飾血(トランステイン)】
自分自身の血というアピールポイントを捧げることで、この衣装は色のない普通の衣装から、強力な魔力という効果を持ったマジカルコスチュームへと進化することができる起動。
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