我が家とご近所さん
「まずご案内するのはこれから2週間住まわれる家になります」
案内されたのは戸建ての一軒家。一階建で塀に囲まれており、庭や畑などがあることがわかる。
雑草は取り除かれており、定期的に手入れされている事が分かる。
築50年といったところか、中に入るとリフォーム済みのようで、トイレは洋式でありがたやウォシュレットもついている。風呂や台所、居室、茶の間に床の間と3DKの間取りで、一人で住むには十分過ぎる広さだ。
一定の家具も案内された通り置かれており、何か買い足す必要はなさそうだ。
居室にキャリーケースを置くと、電気や水やガス通っている事も確認していく。
江角さんは部屋の中を案内すると、ご近所さんも紹介してくれるというので、江角さんが運転する軽自動車に乗る。
近所と言ってもすぐ隣ではなく、300メートルは離れており、なおかつ今は畑にいるだろうとの事だった。
車から降りると、畑で包丁を持ってキャベツの収穫をしている女性がいた。
「
俺は頭を下げて顔を上げれば、畑からこちらに来てくれたようだ。日焼け防止に被っているのか、首まで布が垂れている帽子のつばを少し上げて顔が見える。
70代くらいだろうか。
「山内です。よろしくお願いします」
「あら、なんだって若いお兄さんが来たんだねえ。
「村越さんは山内さんがお住まいになる家の手入れもしてくださってる方なんですよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いや、なんて事ないさ。どれ、じいさんを呼ぶかい。あっちでトラクター乗ってるんだ」
藍子さんの視線の先には乗用の大きな赤いトラクターで、畑を耕すじいさんの姿が見えた。
藍子さんはじいさんを連れてくるとじいさんは農業連合のロゴの入った帽子を取り、頭を下げてくる。
「
隣人はいい人そうだと一安心する。何でも聞いてくれと言うので、早速だが質問をしようと思った。
実は目の前には柵が張り巡らされており、俺の背丈も超えるほどだった。杭と杭の間には10本ほどの針金が貼ってあり、お手製感がある。
それがずっと気になっていた。
「これってなんですか? 畑にこんな高い柵初めてみたんですけど……」
そう言いながら、ふと柵に手が伸びてしまった。
「触っちゃいかん! それは獣の避けの柵なんだよ。電気が走ってる! 下手したら死ぬぞ!」
俺は縮み上がり、手を握り締めた。
知らない土地では何にも触れない方がいいと学んだ。
「すまないな。急にデカい声出して。だけども、この辺の山には本当に獣がわんさか住んでいてな。収穫を前に荒らされる事もあっから、こうやって囲ってるんだ」
「いえ、こちらこそ何も知らないのに手を出そうとしてしまってすみませんでした。勉強になりました」
ペコペコと俺は頭を下げて、役場の江角さんと共に隣人の挨拶を済ませて、役場へと赴いた。
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