第4話
「お、きたきた。君がハジメの押しかけ彼女?自分から都合の良い彼女になるって言ったって本当?」
「はい。先輩のご友人の方ですよね。」
先輩がいつもご飯を食べているという屋上にいたのはこれまた驚きのメンツ。
生徒会長にザ・体育会系って感じの人。見事にバラバラだ。
ちなみに私を押しかけ彼女と称したのは生徒会長である。
「知っていると思うけど、生徒会長の桜木だ。」
自信がありそうな正統派イケメンさん。
「俺はバスケ部の原崎。」
ニカッと笑う陽キャ全開のイケメン。
自己紹介をされたのでこちらも返す。
「どうも、双葉先輩の都合のいい彼女の鈴野です。」
真顔で言いきりましたとも。表情筋がまた動かなくなったんで。
「その都合のいい彼女の幼馴染の宮野です。」
にこやかに笑いかけるみっちゃん。暗雲が後ろに見えた。きっと私に押しかけ彼女と言ったのをイラっときているのだろう。そういうことにする。たとえ余計なこと言うな、これ以上暴走したら責任取れるのかというセリフが伝わってきたとしても。
「双葉ハジメだよ。よろしく。」
「もちろんです末長くお願いしますねせんぱっ」
「すみません、この子初恋拗らせて暴走気味で。」
私の口を塞いだのはみっちゃん。なぜだ。
「ところで双葉先輩。わざわざ友人にさつきを“都合の良い”彼女と伝えているみたいですけど。」
「俺が今まで彼女を作らなかったからかしつこくてつい。嫌だった?鈴野ちゃん。」
ぷはっとみっちゃんの拘束から逃れ、即答した。
「嫌なわけがありません。たとえ“都合の良い”とついていたとしても彼女として先輩のご友人に話してもらえるなんてとても嬉しいです。」
「そっか、よかった。」
にこりと笑顔を返してくれて私はうっとりと見惚れていた。だからみっちゃんと先輩のご友人が話していた内容なんて聞こえなかった。
「話をしている時も相当だけど、本人目の前にしたらもっとすごいなんて……」
「なぁ、あの子の目にハートマーク浮かんでない?なぁ。」
「ああ、俺にも見えるよ。…………色々とすごい子だなぁ。ていうかあの子本当にあの鉄仮面の美少女?面影も何もないんだけど。」
「本人ですよ。ところで生徒会長さん、あの子のこと都合のいい彼女って言ってましたよね?」
「え、いや言ったけど………あ、いて、お願いだから足踏まないで!俺生徒会長!」
なんだか騒がしいなと振り返ればみっちゃんが生徒会長の足をげしげしと蹴ったり踏んだりしていた。仲が良くなったなぁ、なんて思いながら見ているとつんつんと肩をつつかれた。
振り返ろうとすると目の前には先輩の綺麗な顔が近くて。
気づいたら私は先輩にキスをされていた。その事実の驚きながらも私の手は先輩の腕を掴んでいた。
先輩は優しく微笑みながらまたさっきのように顔を近づけ、私が目を閉じると………。
「いや何やってんの!」
ちっ、邪魔が入った。イラっとしながら声の主、生徒会長を見れば憤慨しているのは一人だけで、みっちゃんは母親のように成長したなぁ、という生暖かい目で。原崎先輩はおお、と感心したようにこちらを見ていた。
残念に思っていると先輩はちょいちょいと手で呼んできたので耳をかすと、先輩は甘い声でそっと囁いてきた。
「続きは邪魔されないときにでも、ね。」
………………腰が抜けるかと思った。先輩のファンの人たちが言っていたことを思い出す。
『あの甘い声を耳元で囁かれたらたまらない』
あの時は引いたりしてすみませんでした。心から同意します。
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