閑話 双葉ハジメ

鈴野という後輩はは随分といい性格をしているようだ。手のひら返しが素早すぎる。好きになられる理由に心当たりがないし。一応毎週同じ当番になったからそれなりに仲良くしときたいとは思ったけど。


鈴野ちゃんはそれなりに可愛い子だと思う。声かけたいって言ってる奴らは俺らの学年に多い。

髪はストレートで、いっつも無表情。そして俺にすっごい冷めた目を向けてくる。まぁ当然だと思うけど。噂、だいたい合ってるし。


それが、これだ。


「よろしくお願いします。今日もカッコいいです。愛してます。」


茶化してみても。


「よくわかりましたね。はい、好きです。」


………すごくストレート。もっと軽く言ってくれればいいのに。真面目に言われると可哀想になってくる。こういう子って、他の子とくっついてたりすると、やめるように言ってくるし。付き合ってもいないのに。

鈴野ちゃんもそういう子に見えたけど………本当想定外。

俺が噂は本当だと言っても、軽蔑の色もなく、知っている、とだけ言われた。

しかも他の子と何していてもいいとか。本当に俺のこと好きなのってくらいに淡々と。でも。



「先輩と一緒にいる口実が欲しいんです。今日みたいに、委員会の日以外にも会いに行きたいし話したい。彼女なら、堂々と行けるから。」


「先輩、私と付き合ってくれませんか?」


ぞくりとした。無表情なのに目だけは熱を孕んでいた彼女は、うっとりと、恍惚としたように表情を変え、目に浮かぶ熱はより熱く。

思わず生唾をのみ、彼女に魅入る。


………とんでもないね。こんなの隠し持ってるとか。


「うん、いいよ。俺にとって都合のいい彼女になってくれるなら。」


我ながらクズだな、って思う答えだけど、鈴野ちゃんは嬉しそうに目を細めた。

俺は、これはハマりそうだ、なんて思ったことは見ないふりをして。

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