第2話
今日は火曜日。私と先輩が委員会の当番の日。
先輩が、今日もよろしくね、と言った後、私はこう言った。
「よろしくお願いします。今日もカッコイイです。愛してます。」
「え。」
「え?………あ。」
……………やってしまった。ああ!先輩も面食らってる、でもそんな顔も好き!
「えっと、うん。仕事しようか。」
なかったことにされた。少しショックだ。ため息をつきながら本の貸し出しカウンターの席に座り、誰も来ない間、隣に座る先輩を見る。まつ毛長いな、肌もキレイ………。
そんなことを考えながらじぃっと見つめていると、先輩も無視できなかったのか小さな声で話しかけてきてくれた。
「えっと、鈴野ちゃん?そんな熱烈に見つめてどうしたの?もしかして俺に惚れちゃった?」
なーんてね、と茶化そうとしているのに気づき、すぐさま本音をこぼした。
「よくわかりましたね。はい、好きです。」
ここまで言えば先輩も流石に茶化せないことに気づいた。そして私の熱がこもった視線で、聡い先輩は私が本気だということに気づいたようだった。
「ここではなんだし、委員会の後でいい?空いてるかな?」
「もちろんです、デートですね。」
食い気味に答えれば先輩の顔が少し引き攣った。そんなことは気づいているけど、ここで引くわけにはいかない。私と先輩の接点はこの日の委員会の時間だけだから。
「鈴野ちゃんはさ、俺のこと、好きなんだ?」
「はい。」
「こういう言い方もどうかと思うけど、俺、軟派な男だってよく言われるんだけど。知ってる?」
「彼女ではない人とデートしたりキスしたりしているとは聞いたことがあります。」
「うーん。それ本当のことだけど、知っているなら余計に不思議だな。」
鈴野ちゃん、そういう男嫌いだよね?先週の火曜も俺に関わりたくないっていう態度だったし。そう言う先輩は苦笑していた。私も隠す気は無かったので正直に言う。
「はい、最初は『けっ、このリア充め。所詮顔とスペックだけの軽い男のくせに。』とか思ってました。」
「うわ、結構言うね。先輩泣いちゃうよ?」
「泣くなら待ってください、動画撮りたいんで。」
泣いている先輩なんてレアなもの、永久保存するしかないでしょう。
「うん、いっそ清々しいほど態度が違うね。前からずっといいなと思ってました、とか嘘を言われるより好感持てるけど。」
「ありがとうございます、じゃあ付き合ってください。」
「それはごめんね、無理。」
即答された。今度は私が泣こうとしますよ?いいんですか?
「ていうか、正直どうして付き合いたいの?彼女じゃなくても恋人みたいなこと、してあげるよ?」
キスとか、ね。そう言いながら人差し指を自分の唇にあてる先輩はとても絵になった。
どうして、か………そんなのは。
「先輩と一緒にいる口実が欲しいんです。今日みたいな委員会以外の日にも会いに行きたいし話したい。彼女なら、堂々と行けるから。」
別に他の人とデートやキスをしていてもいい。私だけじゃなくていい。ただ、私が一緒にいることを認めて欲しい。ちゃんとした理由が欲しいんです。だから。
「先輩、私と付き合ってくれませんか?」
たくさんの愛が欲しいというなら、私が毎日忘れずに愛を囁くから、ね?
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