女性関係がクズな先輩に恋をした

オリビア

第1話

「さつきー、随分と反応薄いけど、どうした?」


そう話しかけてくる友人の言葉に疲れていた私は端的に答えた。


「好きな人、できた」

学校の近くのファミレスで、私は友人のみっちゃんこと宮野みきと向き合って座っていた。

「さつきに......好きな人?」

「いえす。双葉先輩です」

「.........え。あ、双葉先輩?」

「ですです」


開いた口が塞がらないというふうに驚愕をあらわにするみっちゃん。大丈夫、私もまだ混乱中よ。


「嘘だー!あんたあーゆうタイプ嫌いじゃん!めっちゃ毒吐くじゃん!心の中で」

「そうなんだけど、そうだったんだけど!」


好きになっちゃったんだよぉ......。


私が好きになった人、双葉ハジメ先輩。校内で有名なイケメンというやつだ。しかも軽い。何がってノリが?めっちゃ簡単に、お願いしたらハグとかキスとかしてくれるらしい。


肩まで伸びた茶髪で長身、そして女好き。女性関連で揉めたことはまだないらしいけど。 そしてモテる。イケメンが多いとされるこの学校の中でも1、2番らしい。

女の子たちが言うには、とにかくスマート。優しい。過剰に構ってこない。来るもの拒まず去る者追わず的な。あの甘い声を耳元で囁かれたらたまらない。時々見える、さりげなく鍛えられた、 いわゆる細マッチョ?な身体が美しい。などなど。

............色々凄かった。あと、先輩たちの話す時のテンションが一番やばかった。


ちなみにみっちゃんはドリンクを取ってきてスタンバっている。えー、そんなに聞きたい? 良いよ、話そう!あることないこと!


「いや、あったことだけ話せや」


あ、はい。


これは私がまだ先輩を嫌っていたというか、関わりたくないなと思ってたときから始まる。

双葉ハジメと、私は委員会が同じになり、しかも同じ日の当番になってしまったのだ。ちなみに図書委員会である。本人曰く、本は嫌いじゃないし、やりたがる人もいなかったらしい。私?私は残り物でした。............うちの学校の図書委員会って、目立たないし、なのに雑務とか多いから不人気なのだ。

他の、というか私もだけど、図書委員になった人たちは自己主張の弱めの人が多い。そこに異色の双葉ハジメが参加。......正直すごく浮いてる。


とりあえず今日は仕事を覚えて、すぐに解散の予定だったんだ。


『俺、二年の双葉ハジメ。これからよろしくね』


私は、先輩の名前で、二つか一つかどっちなんだとか考えてた。


『一年、鈴野さつきです。......どうも』

『鈴野ちゃんはさ、このあと暇?』

『いえ、友達と放課後用事が。』

『え、じゃあ今待たせちゃってる?』


この時私は、この人ちゃんと気遣いできたんだ、強引に予定に付き合わせる系かと思ってた、と割と酷いことを考えてた。


『いえ、五時くらいからなんで。』


なんで正直に答えたんだろうなんてその時は後悔しながら、それまで一緒に遊ぼう、って話になった。

自分でもあの時の態度は悪かったと自覚している。それでも先輩の態度は変わらなかった。

ゲーセンに行ったんだけど、そこで私はクレーンゲームをするために両替しに行ったんだ。 先輩もどうやら挑戦するらしくて、ふっ、このクレーンゲームの達人である私が直々に見てやろう、 なんて上から目線で考えてた。


『え、鈴野ちゃん。上手すぎない?俺二回ぐらいで取れる人見たことなかったんだけど。』

『私の最高記録は一回です。』


ドヤ顏をしながら答えた。相当うざかったはずだけど、先輩はよいしょをしてくれた。

........ あれ、この人いい人かも。多分この時やっと、私は偏見を抜ききって先輩を見たんだと思う。

え、ちょろい?うん知ってる。


で、ここからがもう凄かった。先輩めっちゃいい人。過去の私に出会い頭にアッパーカウンター食らわせたいくらいに後悔した。

どんどん好感が上がっていく時、それは起こった。


『にーちゃん、これ本当にいいの?』

『もちろん。俺にはちょっと可愛すぎるからね。妹さん、喜ぶといいね』


妹のために人形を取ろうとして取れなかった少年に私が取った人形を渡していたのだ!誤解のないよう言っておくと、お金はもちろん先輩が出して、そのお金で私は達人の腕を駆使して得た人形だった。.........しかも、先輩がずっと欲しがってたシリーズの。クレーンゲーム限定のものらし く、諦めていたところに達人の私が現れ、普段隠していた好きなシリーズの人形を集めているのが 今日会ったばかりの私にバレるくらいには好きならしい。なのに......それをいとも簡単に。しかも人気のため残り一つだから次はないのに!


きゅん、なんて可愛らしいものではなかった。ぐさっと、それはもう深く私の心にささったのだ。 もう女好きとかどうでもいいやってぐらいに。


こうして私、鈴野さつき。高校一年生になり、女性関係がクズな先輩に恋をしました。

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