星の銀貨
「アキナねえ、お母さん大好き!」
いつもの様にそう言って母に抱きついた。
母がにこにこと笑っている。
アキナは母が喜んでいる顔を見るのが好きだった。
「ねえ、今日はこの本読んで」
いつも、寝る前に本を読んでもらっていた。
その本の中でも『星の銀貨』という物語が大好きだった。
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アキナは森の中で虚ろに母との思い出をなぞっていた。
もう何日経ったのだろう?
早く家に帰りたい。
帰ったらいっぱい母に甘えて、ご飯を食べるんだ。
オムライスがいいなぁ。
パンケーキも食べたい。
「お腹空いた……」
ふと、隣で横になっているハジメの声が聞こえた。
スカートのポケットを探ると一つだけ飴玉が入っていた。
黙って自分の口に入れてしまおうかと何度も思ったが、ハジメがいる手前、それが出来なかった。
「ハジメ君、これ、どうぞ」
ハジメは奪うようにとって飴玉を口の中へ入れた。
神様の祝福がありますように……
アキナはそう心で唱えながら横になった。
夜中、またハジメの声が聞こえた。
「寒い」
アキナは自分の着ていた上着をハジメにかけてあげました。
神様の祝福がありますように……
そして再び横になりました。
もう喉がカラカラで視界も虚ろです。
「ねえ、まだ食べ物隠してるんじゃないの?」
ふと、ハジメの声が聞こえましたが、もう起き上がる元気はありませんでした。
神様の祝福がありますように……
そう考えながら目を閉じました。
*********************
真っ暗な世界に佇むアキナの周りに銀色の星が降って来ました。
いいえ、どんどん体が空に向かって上がっていっているのです。
「わあ! お母さん、あのお話、本当だったよ!」
心優しい少女の周りを無数の光が包み天高く飛んでいきます。
こうして何も知らないまま少女は神様の元へ旅立ちました。
どうかこの子に神様の祝福がありますように。
赤ずきんちゃんとお菓子の家 餅雅 @motimiyabi
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