R 貯金箱

 貯金箱。それはお金を貯めるために使われる箱のことである。

 お金を入れられるために硬貨がはいる程度のスリットが開けられているのが一般的だ。

 また、お金が入れられればなんでもいいので、紙製、金属製、陶器製と様々な素材で作られたものが存在する。


 今回はその貯金箱が出てきた話だ。






 自衛隊と警察の特殊部隊の一部が連携してダンジョンへと挑んだ。

 第一層の草原はゴブリンとスライムしか出てこず、棍棒があれば十分対処可能な敵性モンスターしかいないため、結果は蹂躙となった。

 ダンジョンに軍隊が有効ならば、軍隊が入れば蹂躙になるというのは割と定番として語られる内容だが、それが実際に起こった形である。


 ただ、開けた草原地帯であるためそこに前線基地を設営しようとしてリスポーンするモンスターに困らされている。

 距離をおいてスポーンする傾向にあるモンスターだが、それによって設営した基地の合間合間にポップする形になってしまい、安定して利用できる状況にならなかったのだ。


 また、階層移動する魔法陣も発見した模様。漫画などに慣れた自衛隊員が無警戒にか、覚悟を決めてか、踏み込んでその先が次の階層であることを確認していた。

 前線基地を作るなら第二階層のほうがいいと思うのだが、そこに設営することはなかった。

 第一階層と比べても第二階層はムダに広い。そのため、危険性を大きく見たのだろう。


 なので、今日は第一階層のザコを自衛隊が狩り続け、リスポーンのパターンを把握したり、レベルが上がる現象の確認が中心だったと言えよう。

 その中にはレベル3まで成長した隊員もいて、だいぶ身体能力が上がっているようだ。

 やっぱレベル制は怖いな……。

 才能依存も魔法技術も大概だが。


 調査チームは安全マージンを取りながら進む方針であり、危険な動きはほとんどない。

 ゴブリンにアサルトライフルを撃つというわりと過剰な攻撃があったぐらいで、あとは拳銃と銃剣と軍用ショベルで対処出来ていた。

 武器の質は相手の強さに合わせるべきであり、過剰な火力は必要ない。そのため、以降は軽装で鈍器になりそうなものを持ち込む方針になりそうだ。


 順調ならいいか。

 私も今日の分のガチャを開けよう。


 R・貯金箱


 出現したのは陶器製の豚の貯金箱だった。

 一般的なピンクに塗装されており、底にゴム栓がはめられた使いまわし可能なタイプの貯金箱である。


 今日日こんなコテコテな貯金箱あるんだ……。

 一瞬そう思ったが、これはガチャの景品。むしろコテコテなデザインのものが出てくるのは妥当なところだろう。

 むしろ凝ったデザインのもののほうが効果がリスキーだったり予想しづらかったりする傾向にある気がする。

 尖った特徴的なデザインがあった場合、そのデザインに由来する効果が発揮されるから判断基準も散る。

 そういう意味ではシンプルなデザインのものはシンプルにその道具の使い方でまず効果を発揮するからわかりやすい。


 というわけで。とりあえず貯金箱に小銭を入れてみることにする。

 消えてもいい兄から預かった500円玉を2枚、投入してみた。

 チャリンチャリンチャリンチャリン、と小銭が落ちる音がして……まて、今落ちた枚数が多くなかったか。


 ゴム栓を抜き、その中から小銭を取り出す。

 500円玉が3枚と100円玉が2枚、あと50円玉が1枚。


 増えてる!

 しかも単純に増えるのではなく、細かい小銭も一緒に増えている。

 それだけで厄介な印象を受ける。


 なので、取り出した小銭をそのまま流し込んでみた。

 ゴリッと一気に増える小銭。

 しかも明らかに古いデザインのものが混ざっている。


 これぶん回してるだけでそのうちなにかおかしな硬貨が出てくるやつでは……。





 後日。やりやがった。兄が複数の国の硬貨を同時に流し込んだ結果、異世界の金貨を出力させることに成功しやがった。

 金貨は純金であるため、その重量の分だけ価値が保証される。

 小銭を複製するだけでも利益を生み出す貯金箱はそれだけで危険だが、異種の組み合わせで異世界の硬貨を出力できるとなると話が違ってくる。


 なぜなら。

 出力された金貨は、指で砕け、瞬間的に身体能力を高める力があったから。

 おそらく、これは取り寄せられた金貨のデフォルト機能だ。

 金をそのまま力にできるとはなかなか恐ろしい世界である。


 そして、厄介なことに。特定の硬貨の組み合わせで取り寄せられることを兄はすでに見つけている。

 つまり好きなだけこの金貨を取り寄せられる。


 誰でも使える強化アイテムを大量に調達するのやめろ!!!

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