R コーヒー豆

 コーヒー豆。コーヒーを煎れるのに使われる豆のことである。

 産地や品種によって味や風味、香りが変わり、こだわる人間はとことん拘る代物だ。

 中にはとんでもない出自のものすらあり、驚くほどだ。


 今回はそのコーヒー豆がでてきた話だ。







 ニュースにて、ダンジョンの調査を行うことが決定されたことが発表されていた。

 思ったよりも早い発表だった。

 戦闘が懸念されるために、それが可能な戦力……つまり自衛隊の一部を投入することになったらしい。


 こういうとき自衛隊動かすの大変なんじゃないかと思わなくもない。

 先に警察を動かすのがいつもの動きなような気もするが、実際は自衛隊が先に動くことになった。


 ある意味で基部の街の存在が頭を柔らかくしたのか。

 創作のような出来事が現実に起こり得るということがわかったからか、それに対してどう対処するかというのをあらかじめ考えていなかればもっと時間がかかっただろう。


 つまりはまあ、政府もまたこのダンジョンを「小説に出てくるようなダンジョン」だと認識しているのだ。

 そして、おそらくはモンスターがあふれてくる可能性も考慮している。

 その可能性を考えると、警察の装備では不足だ。

 今の警備は「人を入らせないようにする」ものであり、「モンスターが出てこないようにする」ものではないし。


 だから早期に自衛隊をつっこませて、戦闘を経験させるつもり、と。

 この手の管理されたダンジョンと軍隊の相性は言うまでもないだろう。

 教練に組み込んで兵隊のレベル上げとか考えたくねぇ。


 しかしまあ、どうなるか。

 一層にしろ二層にしろ、銃弾が効果を発揮しやすそうなのがゴブリンしかいない。

 スライムに銃はちょっと厳しそうだ。


 それも含めて調査か。

 自衛隊なら私でもよくわからなかったことも調べられるだろう。

 そして、私とは違う視点で情報を集められるだろう。


 サメ機巧天使シャークマシンエンジェルを調査部隊に潜ませておくか。

 忍者のジョブを植え付けたやつなら見つからずに、情報を盗んだり犠牲者を減らす助けにできる。


 情報は大切だ。うん。


 さて、今日の分のガチャを開けよう。


 R・コーヒー豆


 出現したのはコーヒー豆だった。少量を紙袋に入れられた状態のものである。

 おそらくコーヒー1杯分の豆なのだろう。これを挽いてコーヒーをいれる分量というわけだ。


 で、当然困る。

 コーヒーを煎れるための道具なんて当然ないわけで。

 コーヒー豆である以上、挽いていれて飲むためにあると思うのだが。


 どうにもならない……と思って袋をカサカサと振ってみた。

 豆の擦れる音が聞こえてくる。カサカサと音を立て、だんだんそれが湿った……というより細かいものにへと変わっていく。


 袋を開けてみたら、コーヒーの粉になっていた。

 あっ、そういう。

 自分で粉になるコーヒー豆ってことね。


 ……地味!



 後日。兄が粉になった豆をコーヒーにして飲んでいた。

 自己粉末化したコーヒーの味はというと、微妙だそうだ。

 インスタントに毛が生えたような味らしい。

 なんだその微妙な味わいは。


 まあ勝手に粉になる豆とかそんなもんか……。

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