R 赤の形見
形見。亡くなった知り合いの持っていたものを、その知り合いの代わりに持つ文化のことだ。
故人との思い出を思い起こさせる依代であり、残されたものにとっては故人の代わりとしての側面もある。
ただ、物の価値によっては、親族によって奪い合いとなり、無駄な死人を増やすだけの結果となることも……。
今回はその形見が出てきた話だ。
形見……?
調査チームの第二階層調査がスタートした。
第一階層はモンスターを10万体ほど倒したあたりでその強さとポップする数が資料として載せられるほどの確度で情報が集まったため、これ以上の情報は必要ないということだろう。
第一階層には罠のようなものもなく、モンスターが湧くだけの平原だ。なのでモンスターの情報が集まってしまえばあとは広さぐらいしか情報はない。
その何もなさは数時間調べれば嫌と言うほど理解できる。だから調査チームのそうそうに切り上げた。
で、第二階層はアノールロンドも顔負けの廃墟の城下町である。いきなり情報量が跳ね上がって調査チームはどう対処するのか。
簡単なことだった。人海戦術である。
建物は一つ一つ虱潰しに、たまに遭遇するスケルトンは持ち込んだ近接武器で対処。
宝箱も現地で開けて中身を回収していく。
高所から見た情報と現地を歩いた情報を組み合わせて地図を作り、人海戦術で建物の情報を追加していく方式である。
中世の都市をイメージした階層であるため、そこまで大きな建物がないのもこの方法で対処できている理由だろう。
ただ、それでも第二階層の地図を完成させるだけでも数日掛かりそうだ。
第二階層は奥に進めばスケルトンの数が多くなり、対処にも手間がかかる上、次の階層に進むには中央にそびえる巨大な城を攻略する必要がある。
しかも迷宮になっている。ややこしい構造になっていて、床を歩いているかぎりは必ず迷うことになるだろう。
スケルトンしか出ないから敵の脅威度は高くないが、迷わせることで疲労を誘うわけで……。
第二階層は思ったよりも結構危険な場所だ。計画性が問われる。
調査チームは軍人であるため、その計画性は問題ないはずだ。
その分、実入りもあって厄介なことになる可能性もある。
どうなることやら。
気をもんでもしかたないか。
今日の分のガチャを開けよう。
R・赤の形見
出現したのは赤い宝箱だった。
蓋はすでに半開きであり、中に宝石やら装飾品やらが入っているのが見えている。
短剣なども入っていて、雑多さという意味では海賊の宝箱を思わせた。
で……、形見。
形見かぁ。誰の形見なのか。
通常、形見は身近だった人物から相続するものだ。こんなふうに、赤の他人の物を引き取っても形見とは言わない。
思い出を語れるものでないと、形見とはいい難い。
ただ、例外もある。
それが有名な人物のものだった場合だ。
一帯を荒らし回り、伝説となった海賊。
世界的な知名度を持つアーティスト。
国宝級のお宝を盗み続けた怪盗。
そのような有名人のものならば、赤の他人であっても語れる伝説がある。
それ故に形見として言及されることも……まああるだろう。
だがこの赤の形見にはそういったエピソードもなにも添えられていない。
強いて言うならこの赤、と銘打たれている点ぐらいだろうか。
赤とはなんなのか?
中身の装飾品や短剣は関係あるのか?
形見と言われる理由もあるのか?
何もわからない。
赤とだけ銘打たれている点にはなにかありそうという印象だけがある。
そして答えは箱の中にはない。
後日。兄が答えを見つけ出した。
ゲームの初期アイテムだった。赤と青と緑の3つの宝箱から形見として初期配布アイテムを選択するシステムで、その中の赤の形見がガチャから出てきていたのだ。
そこそこ有用なアイテムで、HPが増える宝飾品とか換金アイテムとか攻撃に補正がかかる短剣とか致死攻撃を1回だけ回避するアイテムとかが入っていた。
で、この景品の赤の形見も、同じ効果があった。
有用といっても初期装備。効果そのものは微量で、常時効果である。そのため現実で使っても分かりづらい。
比較しても効果がはっきりわからないこともある。
攻撃力に補正がかかる短剣なんてどうやって確認すればいいんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます