R スコップ

 スコップ。土を掘り起こすための道具だ。

 スコップとシャベルは、日本の東西において扱う対象が異なることでも有名である。

 大きなものと、手のひらサイズのもので、互い違いに呼び名が入れ替わっているのだ。


 今回はそのスコップがでてきた話だ。





 ダンジョンからスゴスゴと逃げ帰ってきた。

 あのあと、12層まで潜ってみたのだが、情報量が増えない。地形のパターンやドロップアイテムや宝箱の質、モンスターの強さなど潜れば潜るほど変化はあったのだが、予想できる範囲内だったのだ。

 奥に行けば奥に行くほど強い。ドロップアイテムも良くなる。

 ただそれだけ。


 特にダンジョンの謎に迫れるような情報はなにもなかった。

 しいていうなら、5層ごとに上へあがる魔法陣を守っているボスがいたくらいか。

 無論、ボス相応の強さがあるだけで大したことはない。


 人類は利益には抗えない。

 機神からの放出は機神の制御下にあって、自由に利益を得られる環境ではない。

 魔法にしても、機神と国との規制と、才能によるふるい分けで手に入れられるのは一握りだ。

 だが、そのどちらもがダンジョンは手に入れられる可能性がある。


 だから民間と他国がどう動くかわかんないんだよなぁ。

 キャパシティもそんなに大きくない。

 海という壁がなく東京の真ん中なので実質誰でも押しかけられる。


 ろくなことにはならないが……。

 国の動き次第か。

 ほかは兄がダンジョンそのものに見向きもせず、どこやら電話を掛けているのが気になるが……。


 まあいい。

 あとは経過観察だ。

 今日の分のガチャを開けてしまおう。


 R・スコップ


 出現したのはスコップだった。いや、シャベルか?

 見ているとどっちなのかわからなくなる。

 両手で扱う、大きなスコップだ。

 紙にはスコップと書かれているのでスコップのはずだ。


 総金属製だがプラスチックのように軽く、これを使っての作業はだいぶ楽そうだ。

 それに手に馴染む。道具として優れているのだろう。

 シャベルかスコップかわからないが。


 地面に向かって穴を掘ってみるが、かなりさっくりと地面に突き刺さり、軽く土を持ち上げる。

 素晴らしい性能だ。

 ものによってこんなに性能が違うこともあるのか?

 もしかしてこれがこの景品の効果だろうか。

 スコップなのかシャベルなのかは、いまいち判明しないが。


 普通に物がいいってことあるのか? ガチャの景品で?





 後日。兄がこのスコップは「スコップかシャベルかわからなくする」効果があることを見つけ出した。

 つまりはまあ、東と西で入れ替わっている呼び名を、さらにややこしく認識を怪しくする代物だったわけだ。

 まったくなんの意味があるのかわからない。


 これまで見てきたガチャの景品って確かにそういう物だけどさぁ!

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