UR 現代ダンジョン その4

 第一層でモンスターを複数狩り続ける。これによってダンジョンがどういう反応をするかを見るためだ。

 結果はというと、倒すたびにランダムな位置へモンスターが再出現スポーンするようになっているようだった。


 この再配置方式ならダンジョンからあふれるまでモンスターが湧き続けて災害を引き起こすということもなさそうに思える。

 しかしこの手の現象はことが起こってからでなければ確認することが出来ない。


 だから私は。


 出入り口に向かってスライムを投げつけた。


 スライムは見えない壁にぶつかったかのように、出入り口の空間に叩きつけられ広がって死んだ。

 光の塵になって消えてしまう。


 出入り口からモンスターが出入り出来ないことを確認した。

 これにより、かりにモンスターが大量発生してあふれても、出入り口から出られず……当然その予兆を外部から確認できることが判明したわけだ。


 警備していた警察がその衝撃音に気が付き、こちらを伺おうとしているが、私はそそくさと上層へ上がる魔法陣に踏み込む。

 姿消しも行ったままなので、警官もモンスターの仲間割れか、突進してきて死んだかにしか見えなかったはずだ。

 それに怪現象としてある程度警戒心は持ってもらったほうがよい。


 で、上層に上がってきて広がっているのは、と。

 街だった。石造りの街が広がっている。


 どことなく中世っぽい雰囲気も感じられる街がそこにあり、そして上がってきた魔法陣の位置は広間の中心地だった。

 そこにも往復するための魔法陣が配置されている。


 で……まあ、すごい広いな。

 目視だと外壁と城門が霞んで見える程度で、中心だろう城が相当遠くに存在している。

 そして、細かい位置にスケルトンがちらほらいるのも感じられる。


 というか宝箱も見えるな。開けてみるか。

 近づき、開ける。特に罠もなくあっさりとそれは可能だった。

 姿を消しているからスケルトンに見つからなかっただけだとは思う。


 宝箱からは野球ボールほどの大きさの玉が出てきた。水晶のような質感のもので、赤い。

 それを凝視していると、システムの助けが生じたのか、ウインドウが開く。


「力の宝珠」というアイテムらしい。で、効果はというと使用すると永続的に力を+3するというもの。


 う、うーん。だいぶまずいぞ。

 仮にこれがレアドロだとしよう。だが、これが出るということがまずいのだ。

 人間の能力を売買することが可能になり……かつ、無数の上乗せができるようになる。

 つまりはまあ、莫大な利益だ。


 それにその後適当に散策するだけでも見つかるポーションの類や、武器防具、魔法の素材類。第一層と比べても第二層は得られるであろう利益が大きい。

 スケルトンも対した強さではない。おそらく第一層でスライムを複数しばいてレベルを上げていれば十分対処可能だろう。


 つまりはまあ、人を送り込んで利益が出る。

 二層までなら脅威も薄い。

 システムもレベルを上げることでステータスを補強する程度のもの。なにか可能性はありそうだが、低レベルなら顕在化しないだろう。


 あとはダンジョン自体の生態とか調べておきたいが……相当潜らないとダメそうだな。

 今のところ、このダンジョンは普通だと言える。よくある小説に出てくる物と同じか、むしろヌルいまである。


 触りだけ調べてもこれだ。

 ちゃんとした調査が入ると、確実に一般開放するって話になってくる可能性、あるよなぁ……。

 面倒事だよ……。

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