UR 現代ダンジョン

 現代ダンジョン。それは現代にダンジョンと呼ばれる魔法的建築物が出現した……という前提の元書かれる現代ファンタジーのことだ。

 ダンジョンにはモンスターが徘徊し、様々な危険が存在するが、同時に人知を超えた効果を持つ宝物や、新資源、新たなる力などが眠っている。

 ある意味では炭鉱のようなもので、ある意味では夢を引くガチャのようなもの。

 命をベットした博打としては割の良い代物である。


 今回は現代ダンジョンの世界観が出てきてしまった話だ。






 私は今、ガチャのカプセルを力付くで押さえつけている。

 片手で握りしめるように握り、その上から影を這わせて固定することでカプセルが開かないようにしているのだ。

 それがなぜかと言うと……。


 このカプセルがURだからだよ!


 目にどぎついギンギラした結晶のカプセルには虹色に輝くURの文字が書かれ、しかもそれは排出すると同時に勝手に開こうとしたのだ。

 押さえつけた今もまだ、ガタガタと手の中で震えて開こうとしている。


 く、クソ、何が何でも開きたくない。

 ここまで力付くで自分から開こうとするカプセルは初めてだ。

 開いたらなんなのかわからないまま、現実に展開されて何が起こったのか探すのに手間取ったりしたのがこれまでだ。

 だが、これは自分の意志でもあるかのように自分から開こうとうごめく。


 しかもその開く力がじょじょに強まっている。私の握力もじょじょに入らなくなり、縛っている影も長時間持つものではない。

 つまりはまあ、無駄な抵抗である。だがしないわけには行かない。

 抵抗しないものに未来はないのだ。無意味だとしても、抵抗したという事実が先に進ませてくれる。


 な、なにかないか。カプセルを破壊? それは開放するのと同じではないのか?

 石化魔法……、ダメだ。確かカプセルは石化しない。どういうわけかわからないが、開封前のカプセルには状態異常が通らない。


 停滞したその状況を覆したのは、カプセルの方だった。

 突如、その内側から十数の武器が生え、私の手を貫いたのだ。

 粗末な鉄で作られた剣や槍、短剣が私の手を貫通し、思わずカプセルを離してしまった。


 あ、まずい。

 そう思ったのは一瞬。

 カプセルは床に落ちると同時に開き、一枚の紙を残して消えてしまった。


 UR・現代ダンジョン


 紙にはそう書かれている。


 ああああもう! つまりはこれ、世界観追加……。

 軌道エレベーターや別惑星、そして組織。あれらのような……出現と同時に世界に新たな要素を付け加える、ガチャの最大規模景品。

 そして、それが私の制御下から逃げる形で展開されてしまった。


 よりによって!

 現代! ダンジョン!


 それは、ものにもよる。

 影響は限定的になるかもしれない。ならないかもしれない。


 だが確実に言えることは。

 基部の街と違って、それは制御できない。

 欲望のるつぼとなってしまえば、おそらく大量に死人が出る。最大で侵略戦争だ。


 責任……取れねえ……!

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