R ベイゴマ

 ベーゴマ。金属製のコマのことだ。

 コマ同士をぶつけ合う喧嘩コマという遊び方をするのをメインとしたコマで、その強さを求めて改造を施すのも楽しみ方の一つだったそうだ。

 現代ではパーツを組み合わせて遊ぶ発展型のホビーも現役である。


 今回はそのベーゴマがでてきた話だ。






 インストールされた異能の対処は組織に丸投げすることになった。

 それぐらいの仕事はそもそもやってた仕事だって主張されちゃった。

 うっかり過保護な神様になっていたようだ。


 そりゃそうだわな。よく考えたらもともと魔法管理して、専用異能作って振り回していた組織だ。

 そういう設定とともに虚構から現実に浮上してきた存在だ。

 ノウハウも溜まってるし、公的機関との連携も可能だろう。

 魔法でゴリ押しする必要もない。


 でも手軽に使える探知機ぐらいは作っておこう。組織側が持ってる探知手段、ちょっと倫理的に問題だったり、時間がかかったり、事が起こってからしか対処できなかったり、で取り回しが悪いからね。

 やらかす異能者を対処するにはちょっと遅い。

 これらを組み合わせて使うノウハウもあるんだろうけど……。


 まあどうにでもなる範囲だからどうにでもなるか。

 人を使う分には仕事は多いほうがいい。それが大きな組織であればなおさら。


 今日の分のガチャを開けよう。


 R・ベイゴマ


 出現したのは……コマと紐? 指先でつまめるサイズの金属製のコマが数個とそれと同じ数の紐が出てきた。

 それぞれ六角形だったり八角形だったりと微妙に形状が異なり、その重さも微妙に異なる。

 色は一般的な鋳物のそれである。


 べーコマか……。

 そもそもこのコマは回すのにコツが必要で、難しい玩具の一つだ。

 大前提として、回すために紐を巻きつけるのが難しい。そのための引っかかりも何も無いのだ。

 現代になれば、上部のパーツに爪を差し込んで回すほうが主流になったのは妥当だと言えよう。


 ガチャやジョブの強化によって私の器用さは常人の数倍になっているので、コマに紐を巻き付けて回すぐらいはそこまで難しいことではないが、これを当たり前にやって回して遊んでいた子供がいるというのは驚くべきことな気もする。

 するするっと巻いてしまって、これを……テーブルの上でいいか。天板に向かって投げるように解き放つ。


 天板の上でベーゴマは回る。それも、一点にとどまって。普通、ベーゴマというものは盤面の反りや回転の影響で弧を描くように回るものだ。だがこれは止まってしまっている。

 コマ自体は回転しているのに、まるで盤面の影響なんて知らないと言わんばかりにその一点にとどまっているのだ。


 地球コマかな……?




 後日。兄がイメージすればベーゴマを自由に動かせることを見つけ出した。

 あくまでコマが回転している間だけだが、投げた人物のイメージにそってコマが移動することがわかったのだ。


 つまり。イメージでコマを動かしてそれをぶつけ合う玩具と。

 ずいぶんとまあ……暴力的というべきか。それとも、ホビアニ的という言うべきか。


 白熱はしそうだな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る